「これが、最初にして最後だ。売りたくても、もう売るものがない。いいザマだ」
「本当ね、アハハハ」
なんの故かわからない笑いがこみあげてきて、カラカラと笑った。
一度も袖を通していない毛皮は、艶々とした光沢を放っていた。優しくブラシをかけた。せめてもの、お詫びのしるしだった。(小金を持ったОLが、血迷って買ってしまったんだわ。こんな殺生の塊みたいな物、今なら決して買おうとは思わない。動物さん、勘弁してくださいね。私とは縁がなかったけど、ふさわしい人に素的に着てもらってください。さようなら)。丁寧に、風呂敷に包み、家を出た。
「さてと、問題はどこで売るかだなあ…」
「そうですねえ…」
事が事だけに、家から少しでも遠くへ離れたところで、隠密裏にすませたかった。しかし、質屋に手づるはなく、車を走らせながらの思案だった。
「御徒町にするか。包丁を叩き売ったバッタ屋の近くに、確かあったと思うんだ」
「あの辺りなら、それこそ五万とあるんじゃないの。行きましょう。そんなに時間がないわ。ショー君のお迎えは七時だから、それまでに耳を揃えておかなくちゃ」
「わかった。急ごう」
小谷野がアクセルを踏んだ。
目当ての質屋でしかし、毛皮は徹底的に嫌われた。毛皮の商品価値はゼロに等しいと、にべも無かった。
「気の毒だから、ガソリン代くらいは払いますよ。一万円でどうですか?」
「はあっ?」
耳を疑った。次いで、激しい怒りが全身をかけ巡った。