第13章 因幡の白兎(16) | 3.5次元の不倫

3.5次元の不倫

この本は恋愛と人生についての小説ですが、
ひきつづき児童書(英語の対訳付)を書きました。
おたのしみに!

頼みの綱の紙袋をしっかりと抱えて、建物を見上げた。質屋の前であった。

訓練箸の挫折は、物心両面に大き過ぎるダメージを残した。とりわけ、悲惨なのは経済状態であった。しかし、支払いの火の手は、個人の都合などお構いなしに追いかけてきた。この日、露木さんへの支払いがどうしても足りず、窮地に立たされていた。

「露木さんに、二、三日待ってもらうしかないかなあ」

「いや! それだけは、絶対にいやだわ」

自分でも驚くほどの強さで拒絶した。

「ショー君に傷がついてしまうもの。ショー君には何の罪もないのよ」

「そう言うと思ったよ。しかし、何か売るといってもゴルフの会員権はとっくに売っちゃったから、こっちはもう何もないしなあ」

「あると言えばあるわ。毛皮がね」

「いいのかい?」

「もちろんよ。買ったきり、一度も着ていないから、引き取ってもらえるわよ、きっと」

「ドレッサーの奥の方で見た覚えがあるよ。高そうな毛皮だった」

「百三十万くらいしたから、いくら何でも十万にはなるでしょう。アハハ、ついに質屋通いだわ」

「身ぐるみ剥がれて質屋のお世話か…。堕ちたもんだ。もう、何も考えたくないよ。ただ、ショー君がいるんだから、お互いに気がおかしくならないように、肝に銘じておこう。まあ、狂ってもいられないけどね」

「そうよ。子どもを抱えて狂っている場合じゃないわ。狂う自由さえないっていうことよ。アハハ。ああ、可笑しい。上等だわ」