頼みの綱の紙袋をしっかりと抱えて、建物を見上げた。質屋の前であった。
訓練箸の挫折は、物心両面に大き過ぎるダメージを残した。とりわけ、悲惨なのは経済状態であった。しかし、支払いの火の手は、個人の都合などお構いなしに追いかけてきた。この日、露木さんへの支払いがどうしても足りず、窮地に立たされていた。
「露木さんに、二、三日待ってもらうしかないかなあ」
「いや! それだけは、絶対にいやだわ」
自分でも驚くほどの強さで拒絶した。
「ショー君に傷がついてしまうもの。ショー君には何の罪もないのよ」
「そう言うと思ったよ。しかし、何か売るといってもゴルフの会員権はとっくに売っちゃったから、こっちはもう何もないしなあ」
「あると言えばあるわ。毛皮がね」
「いいのかい?」
「もちろんよ。買ったきり、一度も着ていないから、引き取ってもらえるわよ、きっと」
「ドレッサーの奥の方で見た覚えがあるよ。高そうな毛皮だった」
「百三十万くらいしたから、いくら何でも十万にはなるでしょう。アハハ、ついに質屋通いだわ」
「身ぐるみ剥がれて質屋のお世話か…。堕ちたもんだ。もう、何も考えたくないよ。ただ、ショー君がいるんだから、お互いに気がおかしくならないように、肝に銘じておこう。まあ、狂ってもいられないけどね」
「そうよ。子どもを抱えて狂っている場合じゃないわ。狂う自由さえないっていうことよ。アハハ。ああ、可笑しい。上等だわ」