「因縁だよ」
「えっ?」
「二代にわたって、口約束で墓穴を掘った。親父の悔しさが、今になってやっと理解できたよ」
「お父さん、何があったの?」
「地主の心変わりで、売ってもらえるはずの土地から追い立てをくらったんだよ。しかも、お目出度いことに、家を建てるつもりで、材木を切った後だった。戦後のどさくさとはいえ、すべて口約束だったから、言われるままに出て行くしかなかった。転落の始まりだよ」
「似た者親子っていう訳ね。ご免なさい、でも…」
「別にいいよ。その通りなんだから」
小谷野は、投げやりな口調だった。無理もないことだった。間違いなく、<口約束の失敗>は連鎖していたのだった。
(親の怠慢だわ。教訓として子どもに語って聞かせていれば、今回のことだって避けられたかもしれないのに。血だわ。血のなせる業だわ)。断ち切れない血脈、そこに真の蟻地獄を見る思いだった。
「これぞ今更だけど、親がちゃんと話すべきだったんじゃないの。同じ轍を踏むなよって言って、それが親の愛情だと思うんだけど…」
「愛もへったくれもないさ。親父はショックから立ち直れないまま、あびるほど酒を飲んで犬死したんだ。子どもを九人も残してだよ。その親父と同じ憂き目に遭うとは、俺も因果な男だ。貴女には申し訳のないことをした」
「変な言い方はやめて! 共同責任よ、これは。だけど、どうしますかねえ。それに、そろそろ帰らないと、ショー君のお迎えの時間が…」
「全部、きれいさっぱりと終わりにしよう。いいね」
有無を言わさぬ、強い口調だった。