第13章 因幡の白兎(14) | 3.5次元の不倫

3.5次元の不倫

この本は恋愛と人生についての小説ですが、
ひきつづき児童書(英語の対訳付)を書きました。
おたのしみに!

「因縁だよ」

「えっ?」

「二代にわたって、口約束で墓穴を掘った。親父の悔しさが、今になってやっと理解できたよ」

「お父さん、何があったの?」

「地主の心変わりで、売ってもらえるはずの土地から追い立てをくらったんだよ。しかも、お目出度いことに、家を建てるつもりで、材木を切った後だった。戦後のどさくさとはいえ、すべて口約束だったから、言われるままに出て行くしかなかった。転落の始まりだよ」

「似た者親子っていう訳ね。ご免なさい、でも…」

「別にいいよ。その通りなんだから」

小谷野は、投げやりな口調だった。無理もないことだった。間違いなく、<口約束の失敗>は連鎖していたのだった。

(親の怠慢だわ。教訓として子どもに語って聞かせていれば、今回のことだって避けられたかもしれないのに。血だわ。血のなせる業だわ)。断ち切れない血脈、そこに真の蟻地獄を見る思いだった。

「これぞ今更だけど、親がちゃんと話すべきだったんじゃないの。同じ轍を踏むなよって言って、それが親の愛情だと思うんだけど…」

「愛もへったくれもないさ。親父はショックから立ち直れないまま、あびるほど酒を飲んで犬死したんだ。子どもを九人も残してだよ。その親父と同じ憂き目に遭うとは、俺も因果な男だ。貴女には申し訳のないことをした」

「変な言い方はやめて! 共同責任よ、これは。だけど、どうしますかねえ。それに、そろそろ帰らないと、ショー君のお迎えの時間が…」

「全部、きれいさっぱりと終わりにしよう。いいね」

有無を言わさぬ、強い口調だった。