「それにしても今の仕事は危なっかしいですね。訓練箸を商品化する前に、何か別の収入源を確保しないと、資金が完全にショートしますよ。よく、これでやってこられましたね」
何度目かのミーティングで、現業の受注予定表を見たコンサルタント氏から手厳しい指摘を受けた。歯に衣着せぬ物言いであった。
「完全なる構造不況です。大きな仕事は望めないし、外製から内製へというのが流れになってしまいました。おっしゃる通り、かなり厳しい状況に置かれています」
「現業の収支が極端に悪いのはまずいんですよ。融資の審査に影響しますからね。どうですか、八掛けで卸しますから、私の商品を売ってみては?」
「はっ?」
「どんな商品でも熱意と工夫次第で必ず販路は開けます。私が言っているんだから間違いはない。訓練箸を売る時のいい勉強になりますよ」
顔を見合わせた。即答できるような話ではなかったが、角の立つ断り方はもちろんできなかった。小谷野が、やんわりと答えた。
「おっしゃる意味はわかりますが、少し考えさせてください。作ることばかりで、売る経験は全くないもので…」
「営業を知らずして、人生を語ることなかれですよ。この話をチャンスととらえなければダメですよ」
「はあ…」
逡巡は、深かった。しかし、この時私たちは、コンサルタント氏の能力を絶対視し、彼こそが成功へのキーマンであると信じ込んでいた。マインドコントロールに近い状態だった。彼の申し出を拒絶する自由は、結局、なかった。