御方様の目に光るものがあった。子どもの話が、御方様にとって拷問にも等しいことを知り抜いているだけに、正視に耐えない思いがした。
「すみません。でも、子どもの話に触れない訳にいかなかったんです」
「いや、何度も言うけど、その点の気遣いは無用だからね。しかし、親っていうのは有り難いものだね。二人を選んで生まれてきたとは、ショー君は大物だよ。この先、ドラマは、まだまだ続きそうだね」
「ええ。どうにかしようと焦った挙句、足元をすくわれました。詐欺まがいの目に遭ったんです」
「ええっ、詐欺! それはまた、ただごとじゃないね。いったい、どういう…」
「でも、御方様、もうこんな時間ですよ」
時計の針は、深夜の一時を回っていた。
「本当だ。時間のことなんか忘れていたよ。この部屋は明日の夕方まで使えるから、今日のところはお開きとするか」
「そうしましょう。寝ないと身体にさわります」
「徹夜は、もうご免だろう?」
御方様が、いたずらっぽい目で笑った。
「はい、金輪際いたしません。寝ないで働いても、ロクな目に遭いませんでしたから」
「寝るほど楽な世の中に、浮世の馬鹿は起きて働くっていうじゃないか。夜は、寝るもんだよ。ゆっくりお休み」
「はい、お休みなさい」
糊の効いたシーツが肌に心地良かった。幸せな夜であったが、掘り起こされた過去の難儀が頭の中で暴れ回り、気が高ぶり、容易に眠りにつけなかった。隣で、御方様も、何度か寝返りを打っていた。