第11章 駆け込み乗車(7) | 3.5次元の不倫

3.5次元の不倫

この本は恋愛と人生についての小説ですが、
ひきつづき児童書(英語の対訳付)を書きました。
おたのしみに!

「まさか…」

「じゃあ、何でなの? その齢して、下手したら命取りになるんじゃないの?」

「そう、一歩間違えたらね。ねえ、話がそれるけど、ここまで生きてきて瑤子は自分が女だっていう事実をどう受け止めている? きつい話で悪いんだけど」

瑤子は、視線を空に遊ばせたまま、しばらく無言だった。

「ご免ね。言いたくなかったらいいのよ、無理しないでも」

「隠しておくほどのもんじゃないわよ。ただね、自分を総括するのは楽じゃなかったわ。特に、二十代の頃はつらかったわよ。どなたかはサッサと結婚しちゃうし。はっきり言って、裏切られたような気持ちにもなったわよ」

「ご免ね。そう思われても仕方ないわ。言行不一致もいいところなんだから」

「でもね、すべては自分の持って生まれた星のせいなのよ。私はね、なりそこないの女なのよ」

「それを言ったら、私だって似たようなものよ」

「ううん。卯月と私は似ているようで、全然違うわ。東京に出て来た時、卯月も含めて、どの女性も素的でショックを受けたわ。とても叶わないと思った。その時からね、男と抱き合わせの人生はあんまり考えられなくなったの。似つかわしくないのよ、どうひいき目に考えてもね。一人で生きて行くのが一番自分らしいって思えるし、男がいなくて寂しいっていう感情もそんなにないしね」

「よくわかるわよ、その気持。聞いていて切ないくらいにね。お互いに親が不仲だったから、その後遺症よね」

「そうね。他の女の子みたいに結婚に理想なんて描けなかったし、男の人が夢や幸福を与えてくれるとも思えなかった。分かり合える友達がずっといなかったから、卯月に出会って共鳴できた時は本当に嬉しかったわ」

「私もよ。老後は瑤子と暮らそうって本気で思っていたんだから。ところが、一人の男が忽然と現れて、恥ずかしながら私がすっかりとち狂ってしまったのよね」