「ええ、ウソ! たった二十万円でも手形なの! イヤだ。つまり、来月は現金が入らないっていう事ね」
「そういう事だよ。今考えればさ、業者に欠員ができたっていうのも、あるいはその辺りに原因があるのかもしれない。喜んで仕事をやったはいいが、現金が入ってこないからやっていけなくなったんだよ、きっと。人事じゃないよ。うちも金が回るかな?」
「回るもなにも…。何とかしなくちゃね。土地のお金が残っているから、来月はどうにかなると思うけど…。しかし、誰の差し金か知らないけど、次から次へとよくいじめてくれるわ。呪われているのかしらね?」
「わからない。何もわからないよ」
(焼肉屋さんで、あんなに楽しそうだったのに…。私だって可哀想なんだけど、男の人って純粋なだけにもっと可哀想だわ。落ち込んでいる場合じゃないわ!)。
「しかし、貴方は幸せな人よね。つくづく、そう思うわ」
「何で?」
「こんなにイイ女が、心中するって言っているんだから」
小谷野は、照れくさそうに微笑んだ。
支払いの当日、手形を受け取りに二人で有理社に出掛けた。<同行せよ>というお告げに従った行動だった。窓口で、それでも押し頂くようにして受け取った手形の裏には、その日暮らしに近い私達にとって絶望的ともとれる数字が刻印されていた。手形の決済日は、天文学的に遠い未来、実に百九十日後であった。天を仰いだ