「致命傷だね」
「何これ? こんな事があるなんて、知らなかったわ」
「まずは落ち着こう。何か、方法があるはずだよ。とりあえず、三木本さんのところに寄ってみよう。貴女は、会った事がないんだから」
「そうね。ご挨拶だけはしておかないと」
三木本さんは、学者肌の温厚な男性だった。(良さそうな方だわ。同じ部落の人かもしれない)。最悪の精神状態にありながら、その一点に光明を見出す思いだった。
冷静を装っていたつもりだったが、三木本さんは二人の様子に何かを感じ取ったらしく、近くの喫茶店に連れ出してくれた。
「失礼ですけど、何かあったんじゃありませんか? よかったら話してくださいませんか? お力になれるかどうかはわかりませんが」
小谷野は、一寸の躊躇もなく口を開いた。
「実は、私どもはギリギリの資金で会社をやっていまして、資金繰りがつかなくなってしまいそうなんです。御社の手形は、百九十日サイトなもので…」
三木本さんは、大きく目を見開いて言った。
「あのう、すみませんが、支払い条件について部長から説明を受けていらっしゃらないんでしょうか?」
「はい、特には…。でも、こちらも悪いんです。文書は頂いてありますから。しかし、勤めていた会社が完全現金払いだったもので、正直なところ、この程度の金額で手形になるとは考えてもみなかったわけです。軽率でした」
三木本さんは、顔中に苦々しさを滲ませていた。