「ああ。あの日、午前中は仕事の話オンリーだったんだけど、ことは昼に起きた。レストランで、貴女が池の白鳥や鴨を見て、わあ、可愛いって言ったんだけどね、その目が愛情にあふれていて、現世離れしていたんだよ。そう、いつもとちがった雰囲気で、特別な何かを感じたんだ。二人のまわりがぱーっと明るくなったように感じたし、貴女がマリア!というイメージに思えたんだ。その時に<三・五次元>っていう言葉が閃いたんだよ」
「三・五次元? 四次元じゃないの?」
「四と三の間っていうか…だから三・五次元って感じなんだ。でもあの瞬間から特別な何かが自分の中に生まれたことは確かだね」
「ふーん、そうだったんだ!」
「でも、私が本当の自分を見せたのだとしたら、貴男との心の共鳴に対して私がこころをさらしたのかもしれないわね」
「そうかもしれない」
「それって、お褒めにあずかったのかしら。でも、もしそうだとすると、三次元では生きにくい局面が続くかもしれないわね。あなた、それでもいいの? 現に、すっからかんになっちゃったのよ」
「でも、一番大切なものは失くしていないよ。二人で居られるという事実だけはね。それにね、だから、二人の結びつきは強いし、揺るがない。何があっても、乗り越えられるよ、きっとね」
こらえていた涙が限界の潮位を超えて溢れ出た。