第9章 裏 目 (11)  | 3.5次元の不倫

3.5次元の不倫

この本は恋愛と人生についての小説ですが、
ひきつづき児童書(英語の対訳付)を書きました。
おたのしみに!

「言葉に気をつけてね。ダメだと思ったら、今日のところは、引き上げてきてね」

「わかってる。心配しないで、いいからね」

 礼服の背中が日に照らされて、まぶしかった。コンビニの駐車場で、爆弾のような不安と闘いながら、小谷野の戻りを待った。<アンタの中にはヤクザな血が流れている>。母の言葉が、頭の中に浮かんでは消えた。。

二十分程経って、小谷野の姿が見えた。安堵感にも増して、憤怒にも似た、たぎる様な思いがこみ上げてきた。(小谷野は、ヤクザと対マンを張るために会社を辞めたわけじゃない。この人をこんな目に遭わせるなんて、一体誰の差し金なの!)。車を飛び出し、小谷野の胸に飛び込んた。

「良かった。五体満足だわ」

「一件落着だ。走りながら話そう。開店に間に合わなくなる」

小谷野が車を走らせた。いつもと変わらない運転であったが、心中何を思っているのか、彼の方から口を開こうとはしなかった。

「疲れたでしょう」

「ああ、さすがにちょっとね。いい度胸しているって、親分さんに褒められたよ」

「そうでしょう。顔に凄みがあったもの。それで、何て話したの?」

「ストレートにそのままだよ。うちの店を気に入っていただいているのは嬉しいんですが、他の方が気にされるのでご遠慮願えないだろうか。退職金をつぎ込んだ店をつぶす訳にはいかない。我々はあの店で食べて行かなきゃならない。わかってくださいってね」

「そしたら」

「物分りは良かったよ。居心地がいいから、気に入って、つい足が向いてしまった。悪かったってね。僕たちのことが、好きだったんだそうだ。優しいからなあって、独り言みたいに言っていたよ」