第9章 裏 目 (2) | 3.5次元の不倫

3.5次元の不倫

この本は恋愛と人生についての小説ですが、
ひきつづき児童書(英語の対訳付)を書きました。
おたのしみに!

「お世話様でした」

「よく笑う人だよ、まったく。いやあ、しかし結構だね。友ありて、若鮎食して、申し分なしだよ。会えて良かったね」

「本当に、こんなに幸せでいいのかしらって、逆に警戒しちゃいます。久しく、普通の楽しさに慣れていないものですから。でも御方様、最上のお料理を頼んで下さったんじゃないですか。食材を見ればわかります。短い間でしたけど、昔取った杵柄ですから」

「やっぱりそうか。一緒にいる事を第一に考えたいって言っていたからあるいはと思ってはいたけど、二人で何か店をやったんだね」

「はい。旬菜亭っていう小さな店でした。おててつないで料理学校に通って、年甲斐もなく夢一杯で船出したんです。でも…」

「失敗したんだね」

「ものの見事に失敗しました。すべての事が裏目に出てしまったんです。裏目の連鎖でした」

「聞かせてもらいたいね」

「はい。お別れする時、小谷野さんが家を出る事になりそうだっていう所までは、お話しましたよね」

「ああ、聞いたよ。彼が一人でそこに住むわけがない事くらいは察しをつけていたけど、そうなんだろう」

「はい。母親には勘当をくらいました。毒舌のマリアも地に堕ちて、勘当のマリアに成り下がったんです」

「なんの、聖少女なんぞいるわけがない。ご本家のマリア様だって、色々と大変だったようだからね」

「そうなんですか。それでまあ、しばらくの間、下町のボロアパートで身を潜めて暮らしていました。語るも恥ずかしいんですけど、小谷野さんがその部屋をマリアの家と名づけて…」