第7章 道 行 (1) | 3.5次元の不倫

3.5次元の不倫

この本は恋愛と人生についての小説ですが、
ひきつづき児童書(英語の対訳付)を書きました。
おたのしみに!

第7章 道  行

「朝から申し訳ありませんが、これをお願い致します」

その朝、私はかねての打合せ通り、朝一番で小谷野課長に退職届を出した。そして、これもかねての打合せ通り、小谷野課長は激しく狼狽した。

「えっ。どうしたんですか。寝耳に水ですよ。とにかく、一旦預かりますから」

そう言うと退職願いを手に次長の席に行き、二人は、大慌てといった様子で会議室に入って行った。

お昼休み、御方様と人目を避けて、少し離れた所にあるホテルのレストランで落ち合った。

「さっきまで、オコリンボと喫茶店にいたんです。驚いたことに慰留されました。この場で退職願いを破り捨てる事もできる、喧嘩相手がいなくなって寂しいなんて言っていました。本心かどうかは別ですが」

「いや、満更嘘でもないと思うよ。オコリンボの心境もわかるような気がするよ」

「これにて一件落着と思っていたら、小谷野君の様子がおかしいんだけど、何か気付いている事はないかって聞かれて、本当に心臓が止まりそうになりました」

「まあ、今までボロが出なかったのが不思議なくらいだからね。潮時だね」

「はい。色々な意味でそう思います。若い人に囲まれて、身の置き所がなくなってきましたし、仕事の面でもパソコンが主流になって、手作業の編集は早晩消えて行くでしょうから。御方様のお陰で脅かしにも負けなかったし、とりあえず職制にはなったし、合格点じゃないかと思っています」