「恋は男を詩人にするっていうけど本当だね。これは凄いわ。ちょっとやそっとの事では驚かないトーホーもさすがにまいったよ。彼は本気だよ。他人じゃなくなったのは、覚悟を決めたからなんだよ。ここまで来たら、その覚悟に殉じるしかないね」
「御方様でも、そうなさいますか」
「ああ、そうするね。でも、いいかい。修羅を味わうよ」
「はい。すべての事は必然だと思うんです」
「うん。だけど、当面どうするかね。家に彼の居場所なんかないだろう」
「アパートを探してみるつもりです。彼も自由になるお金なんかないから、二人で何とかお金の都合をつけるしかありません」
「自分の尊厳を守るためにはお金が必要な時がある。こっちは貢ぐ相手もいないから、多少のお金なら心配してあげられるからね。遠慮なく言ってくれよ」
「ありがとうございます。何とかなると思いますけど、でも心強いです」
「非常事態にどう動くか、天はちゃんと見ている。人としての力量を問われているんだよ」
「はい」
それから数日後、小谷野課長から受け取った手紙の文字は大きく乱れていた。