覚悟の一夜から程なくして、事態は、風雲急を告げた。大きな荷物を二人で分け合っても、その荷は重く、肩に食い込んだ。いったん荷物を降ろす場所、それはお方様の胸の中しかなかった。
「私との事が奥様に発覚してしまいました」
御方様は、首を後ろに曲げて、大きなため息をついた。
「来るところまで来たか。だけど、どうしてわかったんだい」
「奥様が、机の引き出しから私の手紙を見つけてしまったらしいんです」
「女の勘は鋭いからね。ところでさ、言い難い事を聞くけど、小谷野さんとは、まだ友達かい?」
「えっ、あの……」
「他人のままなのかい?」
「あの……、ご免なさい」
お財布の中から小さく折り畳んだ手紙を取り出して御方様に渡した。恥ずかしくて、消え入りたい思いだった。
ご免ね。大事な方なのに、今も愛していらっしゃる方がいるのに、そんな貴女と。ご免ね。
「いいのよ」って君は言っている。微笑みながら、「それはすんだ事でしょう」って言っている。誰かを愛すれば、誰かが傷を負う。こんな単純な事さえ見失う。一瞬にして見失う。それが恋。
そう激しく君を愛してしまった。恋とはいつも一緒に居たいこと。そうなんだ。ただ、そばに居て欲しい。