泣くだけ泣くと、もはや苦悩の空間と化してしまったアパートに戻り、まるでロボットのように食事を作った。相手の顔を見るともなく見て虚ろな会話を交わし、およそ、一週間の時が流れた。
その朝、小谷野課長の顔は晴れやかだった。席に着いた私の顔を、自信に満ちた目でしっかりと見つめ、「ウーちゃん、おはよう」と言ったのだった。
真っ暗だった心に、ポッと灯が灯る思いだった。(もしかしたら、今日会えるのかもしれない。お別れだったら、ウーちゃんっていう呼び方はしないはずだから)。
「おはようございます」
笑顔で小谷野課長の顔を見つめた。そして、すぐにメモを渡された。
今日の夜、いつもの店で会いましょう。大丈夫、これからもずっと会えるよ。愛しているよ。御免ね。後でね。
さり気なさを装って席を立ちトイレに駆け込んだ。ハンカチを口に当て、声を押し殺して泣いた。(やっぱり会えた。会えて良かった。神様、ありがとうございます)。
行き着けの店のカウンターに座り、一杯目の水割りが空になる頃、小谷野課長が姿を現した。二人は、静かに微笑みを交わした。