「そうだったんですか。その後、お子様とは」
「会っていないよ。それが、けじめというものだと思うからね。でもね、今よりもう少し若い頃、成長した息子の影がチラついて頭から離れないんだよ。抱きしめてみても、両手は空を切るだけで抱き止めるものは何もない。苦しかったね」
「お察しします。でも、そこまで苦しんで生きてこられたんだから、僭越ですけど、お子様への償いは十分過ぎるほどに済まされたんじゃないかと思います。すみません、私ごときが生意気な事を申し上げて」
「いや。ありがとう。そう言ってもらえると、随分慰められるよ」
「あのそれで、こんな事を伺うのは失礼だとは思うんですけど、御方様はご自分の人生をどう思っていらっしゃいますか」
「強烈な事件が早々と起きて、後始末のような人生だったかもしれない。でもね、人を深く愛した日々があったのは事実だし、親と姉の面倒は見させてもらっているからお天道様には何とか勘弁してもらえるんじゃないかと思っているよ。友達づきあいの男なら少しはいるし、気ままに旅もできた。人生、まあまあなら上出来だよ」
「お子様にはこのまま……」
「会うつもりはないよ。今世は、子供との縁を結べない人生だったという事だよ。母親を看取ったら姉と二人で静かに暮らして、残るものは施設に寄付をして終わりにするつもりだよ」