「ふーん。DINKSの卯月、ニューファミリーの小谷野だったらしいけど、共に惨敗か。だけど、ウーちゃんのところは思いの外だったね。サバサバした友達関係だと思っていたんだけどね」
「彼にこれといった落ち度はないんです。落ち度のないのが最大の落ち度と言ったらわかっていただけるでしょうか」
「うん。わかるよ。そういう人との生活は結構キツイよね。真綿で首を絞められる、とでも言ったら良いのか……」
「はい。でも、ついこの間までこのまま行くんだと思っていました。大反対を押し切っての早婚を破綻させるなんて、自分自身を否定する事になるんだから、絶対にできないって頑固に決め付けていましたから。愛はないのに、情が残ってしまった。それが実態なんです」
「よく話してくれたね。今聞く限りではね、二つの事実をゴッチャにして考えているから余計に苦しいんだと思うよ。結婚生活と小谷野さんとの関係を分けて考えた方がいい。どっちにしても、今の彼とはむずかしいんだろ」
「ご免なさい。どんなに自分をごまかしてみても、もう限界なんです」
コーヒーカップの淵を噛んで、こみあげる嗚咽をこらえていた。
「前に、トーホーとウーちゃんは同じ臭いがするって言った事があるけど、それは、けもの道の臭いだったんだね。トーホーの昔話を聞いてみる気はあるかな」
「はい。是非、聞かせてください」
「少し面白くない話をしなくちゃならないよ。生い立ちっていうやつだよ。トーホーがどこの馬の骨でどう育ったかなんてどうでもいい話だけど、本質の部分に深く関わっているからね」
「御方様の人となりを知りたいです。差し支えない限りお聞かせください」
「大それた事なんて何もないけどね。結論から言うとね、死の影にまとわりつかれた半生だったんだよ」