あなたが欲しい
髪を結んでいると
もう分からないのね
近くにいても
わたしのことが
気づかなかったと
あっさり言うのね
どうでもいいのね
わたしのことは
駆け引きできない
馬鹿になる
惨めで卑怯な
嘘つきにも
脱いで誘って
手に入るなら
今すぐここで
脱いでもいい
あなたが欲しい
心も体も
ぜんぶ欲しい
どちらかだけなら
ないのと同じ
最初に自分に
恋をして
それから
あなたを愛せばよかった
それなら きっと
泣いて笑って
終わりにできた
ごめんなさい
ごめんさない
たとえ
あなたを泣かせても
わたしは
あなたが欲しかった
あなたは素敵だと
目を見て言うのね
あなたはきれいだと
繰り返すのね
わたしは素敵よ
だから何なの
わたしはきれいよ
だから何なの
だったら
愛してくれるの
もう一度
触れてくれるの
あの目
あの肌
あの唇
忘れるなんて
死ぬのと同じ
あなたが欲しい
声も吐息も
ぜんぶ欲しい
見ているだけなら
生きてられない
最初に自分に
恋をして
それから
あなたを愛せばよかった
それなら きっと
一夜のことと
諦められた
ごめんなさい
ごめんさない
たとえ
あなたを壊しても
わたしは
あなたが欲しかった
わたしは
あなたが欲しかった
何をしてでも
欲しかった
誰が泣いても
欲しかった
ごめんなさい
ごめんなさい
言葉もお金も
欲しくなかった
ただ
あなたが欲しかった
【注釈】
映画「クロエ」を鑑賞後、
しばらくした頃、入浴中に
ふと浮かんできた詩です。
人が人を愛する心は、
なんて不器用なのだろう。
好きという気持ちは、
なんて盲目的なのだろう。
笑われて 馬鹿にされて
それでも憎めないなんて
中村中さんの『友達の詩』
タイトルは忘れてしまったのですが、
数年前に見たヨーロッパの映画。
お金持ちのボンボンで、
学生時代は悪行三昧。
バレれば警察沙汰で、
間違いなく刑務所行き。
そんな男をそんな男と知りつつも、
同級生の頃から、ずっと好きだった女。
彼女自身、ひどいことをされたのに。
ボンボンが社長になって、
白亜の自宅で、美しい妻と子供と
暮らしていると知りつつ、
なお忘れられない。
男の性根は変わっていないと百も承知で、
大人になっても、いくつになっても、
どうしても憎み切れない。
執着と言ってしまえば、
それまでですが。
でも。
損も得も眼中になく、
誰かを一途に想う心は、
やっぱり愛おしい。
心がゼンマイ仕掛けなら
どれだけ楽だろうと思いますが。
けれども。
情緒こそ心の真骨頂。
切なく疼いてこそ心。
どちらがいいかと問われたら、
私はやっぱり、血が通う方を選びたい。

