この同級生。
まだ赤ちゃんだった
娘さんの子育てと同時に、
お姑さんの介護も
していたという。
「大変だったわよ」
幼い娘さんにまで
目が行き届かないと
思った時には、
娘さんを柱に括りつけた
こともあったという。
「赤ちゃんを育てるのは大変だけど、
日に日に大きくなるし、成長するにつれ
可愛いところも見せてくれる」
私は半ば、
吸い込まれるように
聞いていた。
「でもね。介護にはそれがないのよ」
私は、この時の彼女の話を
はっきり覚えている。
よくぞ。
よくぞ。
特に親しくしていたわけでも
なかった私に、ここまで
話してくれたと思う。
その後も、この同級生は
ご飯に誘ってくれたりして、
気にかけてくれた。
今でも心から
感謝している。
私がいたクラスには、
他にも。
小学校の先生を
していた人。
会社では、恐らく
幹部クラスの人。
マッサージ店を
チェーン展開して
経営していた人。
実に様々な人が
集まっていた。
私が、今も切なく
思い出すのは。
看護師だった
クラスメート。
昼は仕事。
夜は学校に通いながら、
同時にコーチングの
勉強もしていた。
ネックレスだったか、
指輪だったか。
もしかしたら、
他のアクセサリーだったか。
「私ね、看護師になってから
ダイヤモンドをローン組んで買ったの」
私は、彼女のこの話を
忘れることができない。
「ローンを払い終えるまでは、仕事辞めないで
頑張らないといけないって思えるから」
世の中には。
こういう理由でローンを
組む人がいることを知って、
正直なところ、私は驚いた。
コーチングの勉強になるから
話をしたいと、学校のない日曜日に
うちに電話をかけてきた彼女。
私自身。
時折、声を上げて笑いながら
聞いてくれる彼女と話すのが
とても楽しかった。
そんな彼女は、
卒業後。
一年も経たないうちに
亡くなった。
線の細かった彼女。
気胸だったと聞いた。
ダイヤモンドのローンは
どうなったんだろう。
彼女よりも長くこの世に
存在しているんだろうか...
不謹慎なのだろうが。
あの時、
ふとこう思った。
そして。
その後、
しばらくの間。
彼女の顔が脳裏から
離れなかった。
当時。
私が抱えていた
親への葛藤に対し、
的確な答えをくれたこと。
私は、今でも
とても感謝している。
彼女はもう既に、
立派なコーチだった。
彼女自身。
ご両親との折り合いが
あまりよくないと言っていたが。
それでも。
ご両親は、きっと。
我が子に先立たれた
ご両親は、きっと。
貴女を想って泣いたに
違いないわ。
今日の私のように。