やっぱりお母さん<前編>
やっぱりお母さん<中編>
チェリーが出産した日に話を戻そう。
チェリーが出産したのが、朝7時半前後。
その後、赤ちゃんを口に咥えてこたつに入ったのが、確か10時半前後。
産まれたばかりの猫の赤ちゃんを見るのが
初めてだった私は、もう興味津々。
休んでいるところを邪魔しちゃいけないと思いつつも、
ついついこたつ布団を持ち上げては、チェリー親子の様子を覗いていた。
午後1時半頃。
長男から電話。
駅まで迎えに来てほしいという。
駅からの帰り、コンビニに寄って帰宅したのが、
午後2時半前後だったろうか。
「♪ チェリーちゃんとぉー。赤ちゃんはぁー。はははんはぁーん。
ど・お・し・て・る・か・なー?」
鼻歌交じりにこたつ布団を上げてみると...
!!!
赤ちゃん増えとるやんけ!
1匹... 2匹... 3匹いるじゃないか!
は? なんで? 一体どんな仕掛けになってるんだ?
さっきまで1匹だったじゃないか!
おかしいだろ。チェリーさん。ええ? あんた。
朝1匹産んだ後、涼しい顔して外に出てったじゃないのよ。
「ああ。産んでスッキリした。」
そんな顔してなかったか...?
すぐにうちの中に戻っては来たけど、でもそれは、
赤ちゃんが気になるからだろうとばかり思っていた。
一体どういうことなんだ。あの表情は一体何だったんだ。
あの時は、まだ出産は終わってなかったってことなのか...?
これには、心底たまげた。
あまりにもびっくりして、こたつの中の赤ちゃんたちを見た瞬間、
もしかしたら、私が出かけている間に、チェリーがどこからか
赤ちゃんを2匹かっぱらってきたんじゃないのかと本気で思ったくらいだ。
それとも何か?
こたつの熱のせいか何かで、赤ちゃんに突然変異が起きて、
短時間で急速に細胞分裂して増殖しちゃったのか?
アメーバみたいに? 哺乳類なのに?
相変わらずだな。アホかお前は。
たまげて動揺すると、いつもこうだよ。
3秒程かけて、よく考えてみろ。
そんなわけないだろ。
どうやら。
猫は一度にみんなを産むわけじゃなくて、何時間もかけて時間差で
全匹を産むらしいということが、間抜けな私にもようやく分かってきた。
それを証拠に。
午後5時半頃。
こたつの中で、3匹の赤ちゃんのそばにいたチェリーが
ちょっと切ない声でひと鳴きするのが聞こえた。
は!もしや...!
こたつ布団をガバっとめくってみると、
羊膜に包まれた2匹の赤ちゃんが見えた。
おお。やっぱり!
すぐさま、チェリーは羊膜を舐めて破って、赤ちゃんたちとご対面。
その後、2匹の赤ちゃんをペロペロと舐め始めた。
いやはや。まったく。
こんなに驚いたのは、トランプの当選以来だ。
人間の出産では考えられない。
お腹の中にまだ赤ちゃんがいる状態で、あんなに落ち着いていられるなんて。
少なくても、私には落ち着いているように見えた。
だって、ずっとこたつで寝てたじゃないの!
人間の場合、お腹の中に何人いようが、一旦出産が始まれば
産み終えるまで陣痛はノンストップだ。
一人産んで小休止。
「はあ。頑張ったらくたびれちゃったー。ちょっと外に出て気分転換して、
こたつでゆっくり休んでから、もう一人産もっかなー?」
てか...?
そんな展開。
筋金入りの極道の女だって、絶対に無理。
「シマ荒らされたんや!戦争やで! なにグズグズしとんねん!
はよチャカ持ってきいやー! タマ取ったるんやー!!!」
こう啖呵を切る姐さんだって、いざ出産となれば、チェリーのような
ポーカーフェイスを貫き通すことは、まずできないだろう。
それがヒト科の出産というものだ。
同じ哺乳類でも、こうも違うものか...
恐れ入ったよ。チェリー姐さん。
お見それしたよ。チェリーママ。
そのトラジマは、度胸の数だけ刻まれた入れ墨化粧。
女の粋と覚悟の証しのストライプだったのね。
生まれて初めて垣間見た、猫の出産風景。
それは、まさにマジック。
イリュージョンの世界だった。
ちなみに。
中編で書いた人生相談。
回答者はこう答えていた。
まず。
お持ち帰りされている「らしい」という表現。
真偽の程をちゃんと確認していないことを、
非難の材料にするのはいかがなものか。
それから。
相談者が「母親代わり」までする必要があるのかどうか。
まず、自分の幸せを考えることの方が大事なのではないか。
私も回答者の意見に賛成だった。
相談者は、まだ20代の女性だ。
やりたいことが、たくさんあるんじゃないだろうか。
だとしたら、思う存分やればいいと思う。
家族だから。
私が助けてあげなきゃいけない。
偉い。
でも、もし自分の生活と幸せを犠牲にしてまで
母親代わりを務めているとしたら、きっと長くは続かない。
そのうち、誰かを恨み始める。
そうならないように、まず誰よりも自分が
幸せであることを優先したらいいんじゃないだろうか。
子供たちが母親と面会するかどうかは、
父親と母親と子供たちが決めることだ。
それにしても。
“子供たちの母親はろくにご飯を作らず、
子供たちにカップラーメンばかり食べさせていた。”
ああ。耳が痛い。
私も、疲れている時や、ご飯を作るのが面倒な時は、
子供たちにカップラーメンを食べさせることがある。
ええ。
“子供たちの母親は、生活費を稼ぐために
「お持ち帰り」されるのを仕事にしているらしい。”
ああ。これは無理ね。
「お持ち帰り」ついては、たとえ私が望んでも、絶対にお客さんがいない。
「店内でお召し上がり」だったとしても同じことね。ははははは。
あの妖怪。
夕飯のメニューも、弁当のおかずもワンパターンやし。
自分のおやつ買うのは忘れんくせに、俺らの分はすっかり忘れとるし。
シュークリームとかプリンとか、野菜室の中に隠しとるし。
ヘソクリするなら普通お金やろ。しっかり貯めんかい。
おまけにアイス横取りするし。
ファミレス行っても、高いの頼むなって言うし。
「腹減った」って言うと「気のせいやろ」って言うし。
「痩せたい」なら食うな。食うなら「痩せたい」って言うな。
散々食った後に体重測って落ち込むな。腹回り気にするな。
食うなら黙って食え。食った後も黙れ。
食わんでも黙っとれ。とにかく喋るな。
すぐ八つ当たりするし。怒るし。怒鳴るし。物投げるし。
すぐ「もうダメや」って言うし。そのくせ、しっかり食うし。
「おお。忘れとった」「そうやったっけ?」が口癖やし。
「お願いします。美人のママ」って言わんと、駅まで迎えに来んし。
そんなウソ強要して楽しいか? 嬉しいか?
惨めやろ? 虐待じゃね? 何が「ウソは良くない」や。
「約束破るな」って、一体どの口が言うげんて。
「記憶にございません」てか? 政治家か。このババアは。
今日までのこと、一切合切ぜーんぶ
ぶちまけ始めたら夏までかかるわ。
まあ。ほんでもなー...
どうしようもない化け物やけど、
産まれた時からずっと一緒におるわけやし。
どっかに、ローラみたいに美人で素敵な
代わりの母ちゃんがおるわけでもないし。
しゃーないな...
身勝手なデブが服着て歩いとるのが
俺らの母ちゃんやけど、
「一応、母ちゃんやしな...」
私の子供たちからしてみたら、母親としての私は
きっとこんなところじゃないだろうか。
頭に来る母親だけど、でも。
「やっぱり母ちゃんやから。」
こう思いつつ、色んなことをぐっと飲み込みながら
同じ屋根の下で、毎日私と一緒に暮らしてくれているんじゃないだろうか。
私の母親業は、子供たちの憐み、忍耐と諦観、博愛精神と
ボランティア魂によって日々支えられ、成り立っている。
長男。次男。娘。
怪獣みたいな母ちゃんで...
いや。怪獣で申し訳ありません。
それなのに、みんないつもありがとう。
お陰様です。

毛布が大好きなチェリーの赤ちゃんたち。
産まれてから4週間ちょっとです。
丸くて可愛いお腹をゆさゆさ揺らしながら、
元気にちょこちょこ駆け回ります。
現在、この子たちの里親を募集しています。
家族の一員として、この子たちを暖かく
迎えてくださる方はいらっしゃいませんか?
赤ちゃんはみんなで5匹。多分そのうち4匹がオスです。
私は石川県・能登半島在住です。
お近くの方、あるいは遠方の方でも!
ご希望があれば、個別の写真もブログに載せますので。
ご興味のある方は、ぜひメッセージかコメントをお寄せください。
お待ちしております!
応援してくださってるあなた!





