1944年10月12日に始まった台湾沖航空戦、新兵器を多く投入したのになんで惨敗したん!?の巻 | 第伍章「あっそう、ふ~ん!!」

第伍章「あっそう、ふ~ん!!」

主に戦史について取り上げてますが戦史には諸説ありますので、明らかな誤記以外はご容赦を!!

1944年7月7日、サイパン島陥落
 
8月2日、テニアン島守備隊玉砕
 
8月11日、グアム島守備隊玉砕
 
9月11日、米軍ペリリュー島に上陸
 
これにより絶対国防圏の一角が崩れました。
 
 
 
 
 
 
資源地帯と本土を結ぶシーレーンを敵に抑えられると、
 
本土の資源が枯渇し、戦わずして自然壊滅が
 
訪れてしまいます。
 
 
そこで、敵が来襲した時の備えをすることが決定されました。
 
 
敵艦隊が接近して来たら、
 
 
                    1.基地航空隊によってこれを叩く
 
                    2.機動部隊で残りの艦船を殲滅
 
                    3.戦艦部隊による敵上陸部隊への砲撃
 
                    4.すでに上陸した敵は陸軍がこれを殲滅
 
 
というものでした。
 
これを“捷号作戦”と呼称しました。
 
この作戦準備中に敵機動部隊は
 
台湾・沖縄方面にやってきました。
 
 
敵の狙いは比島であり、その後方基地のある
 
台湾・沖縄を空襲し、比島への増援を阻止するためです。
 
 
 
10月10日に沖縄を空襲した、第38任務部隊のレキシントン
 
 
 
敵機動部隊は沖縄を離れた後、台湾へ向かいます。
 
 
ソロモン海域での戦闘で多くの熟練搭乗員を失い、
 
零戦をはじめとする主力戦闘機は
 
敵新鋭機に苦戦を強いられてきました。
 
そこで基地航空隊の再建を目指し、訓練を励んできた中に
 
『第七六二海軍航空隊』があります。
 
 
この部隊は別名『T部隊』と言い、
 
マーシャル泊地の敵機動部隊を奇襲攻撃するための部隊
 
でしたが、作戦用の航空燃料・爆弾等の輸送任務に就いた
 
伊364が横須賀を出港後、まもなく敵潜の雷撃を受け沈没。
 
 
 
伊364と同型の伊361。潜丁型に属し約80トンの輸送が可能
 
伊364を撃沈したシーデビル
 
 
 
天候の加減と敵機動部隊不在のためもあり、
 
作戦は延期されていました。
 
 
 
装備改変に伴い、偵察隊には彩雲
 
戦闘隊には紫電
 
艦爆隊には彗星33型
 
艦攻隊には天山
 
陸上攻撃機に銀河
 
防弾装備を施した一式陸攻二二型
 
陸軍飛行戦隊には四式重爆“飛龍”
 
 
 
新鋭機の投入は喜ばしいけれど、
 
作戦に生産が追いつけず、また機材や
 
各機の整備に精通した整備兵不足もあり
 
また、台湾・沖縄への空襲で破壊された機も多く
 
稼働機数は予定を大幅に下回ってしまいました。
 
 
 
哨戒を厳となし、
 
先に敵を発見し先制攻撃をかけるはずでした。
 
しかし奇襲を受けたのは我軍のほうでした。
 
 
敵機動部隊を発見できず、逆に奇襲を受けたのは
 
敵の電波装置が著しく向上し、友軍の哨戒機はことごとく
 
敵艦載機に落とされ、それは本作戦に参加した哨戒機の
 
搭乗員の練度も低かったせいなのでしょうか。
 
 
 
レキシントンの各種レーダー
 
 
 
本作戦には比島(ルソン島)の基地航空隊も参加するはずでした。
 
しかし9月10日のダバオ誤報事件による基地航空隊の壊滅により
 
稼働機数はほとんどありません。
 
 
そんな状況下で沖縄・台湾と相次いで空襲を受けたのです。
 
しかし12日夜、ついにT部隊が夜間出撃します。
 
総勢90機以上の大編隊です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
敵艦隊上空にたどり着いたものの、54機が対空砲火により
 
落とされ、空母フランクリン・重巡キャンベラに3発命中
 
させたのみに終わってしまいました。
 
ここで敵空母を撃ち漏らしたことが、レイテ沖海戦における
 
戦艦武蔵等、多くの艦艇を失う原因となります。
 
 
基地航空隊は16日まで連日攻撃を仕掛けますが、
 
未帰還機が次第に増えたのを踏まえ、作戦中止が決定します。
 
 
 

 
 
 
米軍の被害は、
 
重巡キャンベラ大破・軽巡ヒューストン大破
 
空母フランクリン・ハンコック小破
 
未帰還機90機
 
沈んだ艦艇は1隻もありませんでした。
 
たったこれだけの戦果を挙げるのに
 
航空機312機と貴重な搭乗員を失ってしまうのです。
 
 
 
ハンコック
 
 
 
ならばどこから空母撃沈11隻・撃破8隻と言った
 
あまりにも誇張された戦果が出てきたのでしょう?
 
 
 
 
 
 
一説によると、
 
撃墜された友軍機の海上から立ち上る黒煙を
 
敵艦が被弾したものと見誤った。
 
その黒煙を複数機から確認し、
 
それぞれが別の艦だと思い込んだ。
 
夜間攻撃の訓練の不十分な搭乗員の“功名心”から
 
不確実情報を「俺の戦果にケチをつける気か!?」と、
 
戦果報告の際に言い切ったのを、
 
航空隊幹部が鵜呑みにしてしまった。
 
とあります。
 
 
T部隊の作戦指導した源田実大佐なら、
 
搭乗員の練度からして
 
このような大戦果が上がるはずもない
 
ことくらいわかりそうなものを。
 
 
 
 
 
 
この世紀の大誤報のおかげで、
 
ルソン島の陸軍部隊をレイテ島に派遣しようとして
 
その大半を揚陸前に沈められてしまったこと。
 
穴が開いたルソンに台湾の第10師団を派遣し、
 
その台湾へ沖縄の第9師団を抽出したお蔭で、
 
沖縄第32軍は
 
極めて苦しい戦いをせざるを得なくなってしまいます。
 
 
 
緒戦の歴戦の搭乗員ですら、空母を討つのが至難の業やったのに
 
訓練途上の搭乗員に空母約20隻をやれるはずなどないことくらい
 
誰にでもわかりそうなものを、大本営も軍令部も焼きが回ったらしい。
 
また誤報に気づいた後も、陸軍にはそのことを知らせず、
 
それが比島における戦いに暗い影を落としてしまいます。
 
 
 
台湾沖航空戦は、
 
一つ歯車が狂うと全てが狂いだす典型的な例だと言えますね。
 
 
 
 
 
 
 
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