「KABRI_38」出て行くラッセル | 針金師フーテンの日々☆スイス・チューリッヒ・ニーダードルフ物語

針金師フーテンの日々☆スイス・チューリッヒ・ニーダードルフ物語

ヨーロッパでスイスはチューリッヒでの路上テキ屋物語、ドロップアウトした青春ストーリー

 

 

 

 

 

 


出て行くラッセル


出て行くラッセル。

フライデイ・ナイトが明け、土曜日の朝。

ボランティアの旅行がありました、ゴラン高原へのデイトリップ。

私は知らなかった、そしてアッチーも知らなかったようで、
ボランティアの中で日本人2人だけが行きそびれてしまった。

「エエ? そういうのってありなの」
私に情報が入ってこないのは分かるのです、他のボランティアと
一緒の時間がほとんどないし、遊んでもいないから。

だけどアッチーは、バナナ園で働いているし、新しく来たイギリス組と
同じだし、そういう話って同室の人間ともしないのかナー……

いずれにせよ我々、日本人2人だけが知らなかった、淋しいです、
疎外されてるみたいで。

大変なことが起こりました。
明日、ラッセルが2ヶ月のキブツ体験を終えて「KABRI」を出ます。
今、夜の10:20、ラッセルは荷物をまとめている、すると彼のカメラが無い。

誰かに盗まれたらしい、チョット前にも200チェッケル入りの彼の財布が、
部屋から無くなりました。

二度も、ここを出る間際になって被害を被る、カメラはニコマート、
ニコンの一眼レフです、三脚もいいのを持っているし、今回の旅の記録が
出来なくなってしまったのは残念、しかし、ここゲットーで無くなるとは。

私の部屋は人の出入りが多い、しかし、誰がって考えられる人間がいない、
とすれば、一番考えられるのは同室の私なのです。
他のボランティアは昼間全員旅行に出かけてましたから、
ラッセルも行きました、そしてカメラは持っていったのか行かなかったのか、
私は知らないけど、とにかく、今、そのカメラが無くなっている。

ラッセル、人間的にはとてもストレートでいい人間なのだけど、ここでの
思い出はいやなモノになってしまうのかも。
フィンランドでの、ラッセルの武勇伝も沢山聞いた、面白いヤツなんだけど
彼の個性をわかる人間はここのボランティアにはいないのかな……

ガキ大将のようで、そして優しい面を持っていて、女の子に対しては、
そうでなさそうに見えて、実は凄く恥ずかしがり屋で単純。
ここに集まっているボランティアの年齢が、若すぎるのか、20歳前後では
彼を理解するには人生経験が足らないかも。

先日のイギリスからやってきたグループの中にオーストラリヤ、カナダ、
ドイツ人とおりまして、スイス、イギリス、オランダ、デンマーク、日本と、
ボランティアの国際色も豊になって参りました。

我々日本人2人が旅行に置いてきぼりになり、ラッセルのカメラが無くなりと、
いやな気分です。

まるでユダヤ人がヨーロッパ諸国で迫害された歴史みたくに、
我々日本人が疎外されてる、チョッと他のボランティアとは東洋人と言うことで
毛色は違うのだが。

名著「日本人とユダヤ人」この本で、やがて日本人に世界の国から、過去に
ユダヤ人が受けた迫害、そのような目が向けられるかもしれない、と
予期していたけどホントに、ここでの最近の日々、いやな感じです。

そんなで、仕事の方はずる休みをしてしまった。
いや、ホントはアルコールを飲み過ぎて二日酔いだったのさ、それとラッセルが
ここを出るのでお見送りをしてやろうとも思ったのです。

見送り人、私一人ってのも淋しいです、ラッセルって日陰の人間なのだナー……
と、車のところまで行ったら、
「これから、Orliの所に行くから、ジャーね」だってさ、彼女のところに行く?
何の為に?

オーリ(Orli)とはエルサレム旅行で、私が吸ったとみんなの前で言った彼女です。

多分、オーリからカメラと財布は返ってくるのだろうと思った。
オーリが仕組んでラッセルがやった芝居だろうと、ラッセルは単純だからオーリの
策をそのまま飲み込んで行った。
でなかったら、最後の最後、カメラもお金も取られて、のこのこキブツ内部の
人間に会いに行くかな、しかし真相は分からないのです。

日本人も外人を目の前にすると、コソコソと話をしたり、探りを入れたりとか、
自分達サイドから相手の様子をみたりする国民だけど、イスラエルの人もする、
似ている国民性だな、そして彼らは策を施す、だけど誰の指示でなんの為に……

 

――つづく――