[ある夏の終わる頃_1」夏の終り、ブリンディッシュからアテネに向う船で | 針金師フーテンの日々☆スイス・チューリッヒ・ニーダードルフ物語

針金師フーテンの日々☆スイス・チューリッヒ・ニーダードルフ物語

ヨーロッパでスイスはチューリッヒでの路上テキ屋物語、ドロップアウトした青春ストーリー

Once upon a time...


昔々、そうZurichの歓楽街、
ニイダドルフでヒッピーをやってた頃の話。

ある夏も終わり、肌寒さも感じる9月のスイス、
真夏の陽気で浮かれたニイダドルフも秋を迎えようとする、
私も荷物をまとめ、温かい南の国に旅にでた。

イタリアのブリンディッシュから、ギリシャに渡る船は
バックパッカーのメイン街道でほとんどの若者はアメリカ、
カナダからユーレイルパスを持ってる旅行者です。



なんたってヨーロッパは彼らの憧れの地、歴史があり、
おまけに自分達の祖先の地、ヨーロッパへ行きたいのです、
そんな彼らの中に私もいました。

夏の終り、ブリンディッシュからアテネに向う船です。



退屈な船の上、暇つぶしに一人の女の子の名前を針金で
作ってあげました。
そしたらまたたく間に人が集まり「私にも作って!」
「俺にも作ってくれ!」ってコトに、
私は得意になって彼らの名前を作ってあげたのです。

「俺はプロなんだぜ! これで飯食ってんだから、
トウモロコシ畑や、森と湖に囲まれ育った君らは
見たことがないでしょう、こんな素晴らしいネーム細工を!」
とそんな言葉を頭の中で呟いてました。

あまりにも人が集まってくる「Excuse me! ……
Please don't come over here because ship will fall over」
と皆に叫んでやったら、「Oh yah~!」って
盛り上がるからアメリカ育ちの若者は面白い。

そんな人垣に囲まれて得意になっている私をジーッと
見ていた女の子がヤエールでした。
私は彼女のコトを特に意識するでもなかったのですが、
その覚めた眼差しに気がついてました。

次ぐ日早朝、船は途中の島に寄り、
ここで降りる準備をしている若者の中にヤエールはいました。



甲板の隅の方にいる彼女と目が合ったその時、
一緒に船を下りないか?
と手と目で合図するかのように甲板の彼女と反対側に
座っていた私は誘われたのです。

一瞬、私ではないだろうと、周りを見渡したあと、
そして「俺か?」とやはり目と手でたずねたのです。
彼女は ニコッっと微笑み「ウン!」と首を振りました。

その時、そのままアテネに行くつもりだった、
少しのためらいはあったが周りで何人かの若者が降りる準備を
しているのを見て、「降りよう!」と腰を上げた。

ザックを背負い彼女のところに、そして……
初めて彼女に声をかけた。

「Hi I'm Yoshi nice to meet you」

――続く――