吉備一人静(キビヒトリシズカ)2


吉備一人静(キビヒトリシズカ)はセンリョウ科センリョウ属の多年草である。
本州の近畿地方から九州にかけて分布し、林の中の半陰地に生える。
海外では、朝鮮半島の南部や中国にも分布する。
吉備は発見地の岡山県吉備を指し、一人静は白い花を1本立てる清楚な姿を静御前に譬えたものである。
環境省のレッドデータブックでは、「絶滅の危険が増大している種」である絶滅危惧II類(VU)に登録されている。
草丈は20~40センチくらいである。
葉は幅の広い楕円形で、4枚から6枚が向かい合って生える(対生)。
葉の先は急に尖る。
開花時期は5~6月である。
近縁種の一人静(ヒトリシズカ)とは異なり、葉が展開してから花を咲かせる。
雄しべの長さは1センチくらいあり、一人静(ヒトリシズカ)の倍くらいある。
葯(雄しべの花粉を入れる袋)の数も4つと多く、一人静(ヒトリシズカ)の2つと区別できる。
写真は4月に京都府立植物園で撮った(植栽)。
学名:Chloranthus fortunei


★どれどれと花の違いを見比べて
 自然のもたらす不思議を感じ


吉備一人静(キビヒトリシズカ)


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踊子草(オドリコソウ)


踊子草(オドリコソウ)はシソ科オドリコソウ属の多年草である。
北海道から九州にかけて分布し、木陰の草むらや林の中に生える。
海外では、朝鮮半島や中国にも分布する。
草丈は30~60センチくらいである。
茎は直立した柔らかい四角柱状で、枝分かれしない。
葉は卵形をしており、向かい合わせに生える。
葉は縮れていて、皺が多い。
開花時期は4~6月である。
葉の脇に唇形をした花をつける。
花の色は薄紫色のものもあるが、普通に見られるものは白い色をしている。
花の名は、茎を取り巻いて咲く花の様子を笠をかぶった踊子に見立てたものである。
若葉は食用になり、根は薬用になる。
俳句の季語は夏である。
写真は4月に赤塚植物園で撮った。
学名:Lamium album var. barbatum


★草むらで花びら揺れる密やかに
 小人のダンス楽しむように
☆分け入れば鈴の音響く踊子草
 小人になりて我も踊れり


踊子草(オドリコソウ)2


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ベルゲニア・プルプラスケンス2


ベルゲニア・プルプラスケンスはユキノシタ科ヒマラヤユキノシタ属(ベルゲニア属)の多年草である。
原産地はヒマラヤの東部から中国の西南部にかけてで、標高3000~4000メートルの湿った草地や山の斜面に生える。
漢名を岩白菜(ガンハクサイ)という。
草丈は20~35センチくらいである。
根際から生える葉は円形ないし楕円形で、互い違いに生え(互生)てロゼット状となる。
葉の質は厚くて艶があり、紅色を帯びる。
現地での開花時期は5~6月である。
葉の間から花茎を伸ばして総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)を出し、小さな紅紫色の花を6~7輪下向きにつける。
花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。
全草が肺部疾病の治療薬とされる。
写真は3月に神奈川県立フラワーセンター大船植物園で撮った。
学名:Bergenia purprascens


★山肌にはりつくように咲く姿
 思い浮かべて愛しさ募り


ベルゲニア・プルプラスケンス


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耽羅玄海躑躅(タンナゲンカイツツジ)


耽羅玄海躑躅(タンナゲンカイツツジ)はツツジ科ツツジ属の落葉小低木である。
原産地は韓国の済州島である。
「耽羅」というのは済州島の古名である。
玄界灘の周囲に分布する玄海躑躅(ゲンカイツツジ)の近縁種である。
本種の樹高は50~60センチと低く、矮性種である。
葉は大きくて長さ9センチくらいの細長い楕円形で、互い違いに生える(互生)。
枝先に集まってつくので輪生しているように見える。
開花時期は3~4月である。
葉の展開に先立って花を咲かせる。
花の色は淡い桃色から濃い紅紫色まである。
花冠は浅く5つに裂ける。
裂片は丸みがあり、重なり合っている。
花の後につく実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)で、仲間のものよりも細長い。
写真は5月に神戸の六甲高山植物園で撮った。
学名:Rhododendron mucronulatum var. taquetii


★背の低い玄海躑躅の珍しく
 雨も厭わずしばし佇み



耽羅玄海躑躅(タンナゲンカイツツジ)2


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マイカイ


マイカイはバラ科バラ属の落葉低木である。
漢字もあるのだが、作字をしないと表示できないので片仮名ですませる。
マイは「攻」の字の偏を「王」にしたもの、カイは「瑰」の字を充てる。
原産地は中国である。
日本へは江戸時代に渡来した。
日本にも分布する浜茄子(ハマナス)の近縁種である。
かつては両者が同一であると考えられていた時代もある。
現在では、本種は浜茄子(ハマナス)の変種であると考えられている。
また、牧野富太郎博士は両者がまったくの別物であると考え、異なる種小名をつけた。
本種には枝に棘がないこと、花が重弁であるみとなどが相違点である。
樹高は1メートルくらいである。
葉は楕円形で、互い違いに生える(互生)。
開花時期は5月である。
花は中輪で半八重咲きである。
花の色は濃い紅紫色で、よい香りがする。
花や蕾を干したものはローズ油の原料とされる。
また、蕾を干したものは中国茶に利用される。
写真は5月に都立薬用植物園で撮った。
ここでの学名表示は牧野説をとっている。
学名:Rosa odorata var. ihea(=Rosa rugosa var. plena)


★薄っすらとその名は知っていたけれど
 実物を見てほっと溜め息


マイカイ2


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風鈴苧環(フウリンオダマキ)2


風鈴苧環(フウリンオダマキ)はキンポウゲ科オダマキ属の多年草である。
ヒメウズ属(Semiaquilegia)に分類されることもある。
原産地は中国である。
四川省やチベット自治区などに分布し、標高1800~3500メートルの地帯に生える。
西洋苧環(セイヨウオダマキ)の近縁種だが、オダマキ属の特徴である長い距がない。
草丈は20~40センチくらいである。
開花時期は4~5月である。
赤紫色の花を下向きに咲かせる。
白花の品種もある。
写真は4月に箱根湿性花園で撮った。
学名:Aquilegia ecalcarata(=Semiaquilegia ecalcarata)


★山の上鐘を鳴らすか苧環は
 遠いチベット忍ぶがごとく


風鈴苧環(フウリンオダマキ)


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シラーペルビアナ2


シラーペルビアナはユリ科ツルボ属の多年草である。
和名は大蔓穂 (オオツルボ)という。
原産地は地中海沿岸地方である。
草丈は20~50センチくらいである。
根際から生える葉は幅の広い線形である。
開花時期は4~5月である。
茎先に円錐花序(下のほうになるほど枝分かれする回数が多く、全体をみると円錐形になる)を出し、濃い青紫色をした星形の小さな花をたくさんつける。
花は下から上へと咲いていく。
花被片は6枚である。
属名はギリシャ語で「害になる」という意味があり、地下茎部分が有毒である。
ツルボ属は温帯地域などに100種くらい分布しているという。
写真は4月に伊豆の海洋公園で撮った。
学名:Scilla peruviana


★紫の花はいかがと手を広げ
 君を手招くシラーの花は


シラーペルビアナ


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垣通(カキドオシ)2


垣通(カキドオシ)はシソ科カキドオシ属の蔓性多年草である。
北海道から九州にかけて分布し、道端や草地に生える。
海外では、朝鮮半島、中国、シベリア東部にも分布する。
草丈は10~25センチくらいである。
夏になると蔓を1メートル以上も伸ばす。
蔓が垣根の下を通り抜けるというのが名の由来である。
茎につく葉は腎臓形で丸く、周りには細かいぎざぎざ(鋸歯)がある。
茎に連なった葉の形から連銭草(レンセンソウ)の名もある。
開花時期は4~5月である。
葉の脇に淡い青紫色の花をつける。
長さ15~25ミリくらいで唇形をしており、紫鷺苔(ムラサキサギゴケ)などに似ている。
疳取草(カントリソウ)の別名もあるが、これは子どもの疳の虫を取るのに使われたということに由来する。
写真は4月に神奈川県南足柄市の足柄森林公園「丸太の森」で撮った。
学名:Glechoma hederacea var. grandis


★可憐なる姿を見せて垣通
 やがて来る夏ひた待つように


垣通(カキドオシ)


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赤矢地黄(アカヤジオウ)2


赤矢地黄(アカヤジオウ)はゴマノハグサ科ジオウ属の多年草である。
原産地は中国や朝鮮半島である。
日本では奈良県で薬用に栽培されている。
草丈は15~30センチくらいである。
地下茎は太くて赤褐色をしており、横に這う。
葉は長い楕円形で、根際から生える。
葉の表面には縮緬状の皺があり、全草に毛が密生している。
開花時期は4~6月である。
茎先に淡い紅紫色の花を数個つける。
花冠は鐘状で、先が浅く5つに裂ける。
生薬の地黄(じおう)には増血効果があり、古くから輸入されてきた。
写真は5月に都立薬用植物園で撮った。
学名:Rehmannia glutinosa var. purpurea


★花の奥紅紫に染め上げて
 赤矢地黄はいたいけに咲き


赤矢地黄(アカヤジオウ)


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走野老(ハシリドコロ)2


走野老(ハシリドコロ)はナス科ハシリドコロ属の多年草である。
本州と四国に分布し、山地のやや湿った林の中などに生える。
海外では朝鮮半島にも分布している。
草丈は30~50センチくらいである。
葉は幅広い楕円形で、互い違いに生える(互生)。
葉の先は尖り、縁にぎざぎざ(鋸歯)はない。
葉の長さは10センチ以上あって広がるので、花は目立ちにくい。
開花時期は4~5月である。
花は暗い紅紫色の鐘形で、下向きに咲く。
花の長さは2センチくらいで、先は浅く5つに裂ける。
花の内側は黄橙色をしている。
萼片は5枚で緑色である。
雄しべは5本である。
雌しべの花柱は糸状となる。
葉や根にアルカロイドを含む猛毒植物なので注意が必要である。
名の由来は、野老(トコロ)というヤマノイモ科の植物と根茎が似ており、間違えて食べると発狂状態になって「走り回る」ということからきている。
地下茎はロートエキスとして鎮痛薬や目薬に使用されているが、劇薬なので素人の利用は厳禁とのことである。
写真は4月に都立薬用植物園で撮った。

学名:Scopolia japonica


★ひっそりと咲いているのに摘まないで
 走野老が悲鳴を上げる



走野老(ハシリドコロ)


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