長女は、高校生の時、同じクラスの少し複雑な家庭環境だった友人に、一人で行くのは不安だからと誘われて、一緒にファミリーレストランで1年半ほどアルバイトをした。
大学生になり、近所に出来たスペイン料理の店でアルバイトを始め、お店の方にとても可愛がってもらい卒業まで働いた。
管理栄養士の資格を取り、給食関係の会社に就職した。
そこは、いわゆるブラックで次々正社員が辞めて行き、残るはパートばかりという職場だった。
2年程して娘もそこを辞め、ハローワークで探した介護食を作る会社に再就職した。
そこは1年経ったら、正社員にしてもらえるという条件での就職だった。
隣にある老人施設への食事提供と、それとは別に介護食の加工をし発送を行う会社だった。
忙しい日々の中、1年程した頃に職場内で、この会社は潰れるらしいから早めに辞めた方が良いという噂が出て、少しずつ回りのパートが辞めていった。
娘は、正社員にしてもらえるという言葉を信じて働き続けていたが、そのうち給料が未払いになっていき、それから3ヶ月後、勤め先の社長が失踪してしまった。
隣の連携していた老人ホームから、栄養士が居なくなると困るので、パートとして働き続けてくれないかと頼まれた。
人の良い娘は、ブラック続きの出来事にウンザリし、もう辞めますと言った途端、正社員にして望みの給料を出すからと掌を返すような好条件を提示され、ますます不信感を覚えて、そこを辞めた。
その後、栄養士や調理師を専門に扱う会社に契約社員として入り、委託された介護施設で働いていたが、新たに出来たばかりのゲームアプリの会社の社員食堂に異動になった。
未知の職場だったが、一緒にタッグを組んだ調理師と相性が合い、社員達の希望に合わせたメニューを作り、ゲーム会社の社長に喜んでもらえたことで、本社での待遇が良くなり、やっと正社員となれた。
やれやれ良かったと安堵していたら、結婚、出産、退職となった。
先日、長女が大学時代にアルバイトをしていたスペイン料理の店に食事をしに行き、私達の引っ越す旨を告げた。
店主夫妻は「お宅の娘さんには、一番忙しく人手の足りなかった時に、夜遅くまで働いて、本当に助けてもらいました。今まで雇ったバイトの中で、一番よく働いてくれた娘さんでした。
うちは、この物価高騰で赤字ギリギリの為、秋には店を閉めるんです。」と話された。
長女は少しとぼけた天然娘だが、大学でも職場でも回りの人間関係にはいつも恵まれていた。
未払いで社長が失踪した会社の時は、パートの老齢のおじさんが、労働基準監督署に一緒に行こうと誘ってくれて、未払い給料の8割程を支払ってもらったらしい。
お金も大切だが、やはり人生は人とのご縁が大事だと思う。