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Kanchiの日常

Muna-ko-mami(通称Kanchi)の日常を綴った日記。仕事から娘の学校、たわいない日々の出来事等。ストレス発散はこのブログのもう一つの目的かも。

RBがJumlaへ行ってから3日たった。RKと二人の部屋の雰囲気はまるで違う。RBの存在感の大きさを改めて思う。口数は少ないのだが、彼がいるだけでたいして用も無い他のスタッフ達が集まって来やすいのだ。私にはRBはオフィスでは最も頼りにされている人物に見える。それは彼がコンピューターに堪能なだけではないと思う。何か困ったことがある人はなぜかRBの所にやってきては相談を持ちかけている。


RBが頼りにされているのはオフィスだけではないと見えて、彼の携帯にはひっきりなしに電話がかかってくるのだ。家族や親戚、それに田舎の同じ村の人達等、やれ病気になっただの、誰かが亡くなったのだの、お金を工面して欲しいだの、中には彼を訪ねて田舎からやってくる人もいる。


多分彼は頼まれた事は責任を持ってやるタイプなのだ。オフィスの仕事では必ずしも言われたとおりに仕事をやらない場合もあるが、それは家族を優先するからだ。きっと家庭では一家で一番頼りになる人物に違いない。その彼が実家を離れてここで一人暮らしをしているのでは何かにつけて困ったことがあると実家から即、電話がかかってくるのは当然ともいえる。そんな時彼はいつも面倒くさそうにしながらもちゃんと答えて、必要な指示を出しているのだ。


上司Bがスイスへ出張中をいいことに私も仕事中外出しまくり。毎日近くのデイリーでアイスクリームを食べに経理のAさんを誘っては行っている状態。今日は行くところを経理のオフィサーAB氏に見つかり、アイスクリームを買ってくるように言われる。ネパールではいい年した男もアイスクリームは好きだと見えて、ぺろぺろ食べている。似合わないのだが。でも私はまだRBがアイスを食べている所を見たことがない。それこそ似合わないと思う。


今日のおやつはRKが持参。RKのお母さんが作ったおかずとロティをいただく。塩がききすぎていて辛い。RBの味付けが好みの私は、早く彼がJumlaから帰って来てくれないかと思う。


でもJumlaから戻ってもRBは二日後レポートライティングのトレーニングへ4日間行ってしまうので又オフィスから離れてしまうのだ。その頃に私もカトマンズへ出張してやろうともくろんでいるが承認されるかどうか。 


RBがJumlaへ出張、RKと二人のPHCの部屋。数日前からRBの出張のことはわかっていたのになんともせつない。今日は仕事をする気にもなれず、あさからあるNGOを訪問すると言ってオフィスを出る。実際に3つのNGO回りをする。二つは初めて訪れたのだが、実にすんなりと受け入れられる。このような飛び込みの訪問客に対しても笑顔で応対出来るところがネパールならではと思う。


一つ目はHIV陽性者のネットワーク。私は今回の仕事に就いてから、GIPAの概念を我々のプロジェクトでも実践しようと決めていた。それをB君はとても良く理解し、賛同してくれたので6ヶ月後の今ではすべてのHIVプロジェクトの対象郡で学校でのPLHAとの交流プログラムを持つ事が決定し、一校ですでに実施され、とても良い反響を呼んだ。


それをコミュ二テイでも実施しようというのが我々の今度の取り組みだ。ところが実施直前になり、ODの

Sからクレームがついたのだ。彼が言うには、PLHAとの交流をさせるのは時期尚早だというのだ。保守的な山間部のコミュ二テイでこのようなプログラムを無事成功させるには、事前の十分な準備が必要だと言うのだ。さもなければPLHAにコミュ二テイによって好意的な態度が取られる事が保障できず、そうなった場合、うちのオフィスの落ち度になり、スタッフは郡支部から咎められる可能性があるというのだ。


私はなんてばかげた事を言うのだろう、と思ったが、意外にもB君やRBがSに賛同する意見を述べたのだ。私はその時思わず向かいにいたRBを睨みつけた。うちのスタッフは誰も彼も自分の身を守る事を第一に考えているのを知り、失望する。どうしてPLHAの能力を信用できないのか。コミュ二テイでもし差別的な態度を取る者がいたとしても、そのような事はPLHA自身予想している事だし、そういう環境の中で彼らは啓発活動を行なってきた、したたかさがあるのだから。その強さをうちのオフィスの面々は知らないのだ!何と言う事であろう。私は、そういうネガティブなコミュ二テイにこそ、こういうプログラムが必要なのだ、初めからサポーティブな所にはプログラムの必要性など無いんじゃないのか?と言ったのだがわかったかどうか。


この不満を二つ目に行ったNというPLHAサポート団体で話すうちになんだか無性に悲しくなり、Mというコーディネーターの、自分たちがついているから心配しないで、と言われた時には涙ぐみそうになってしまった。Mをはじめ、ここのメンバー達は日頃から差別と偏見に苦しむ人々をサポートする仕事をしているのでこの人達に自分の思いをぶちまけた時、ほんとうに癒されるのを感じた。

オフィスでは見せられない弱さを私はその時彼らの前でさらけ出してしまっていたのだが、もうどう思われようとかまわないと思った。私だって弱い一人の人間である。オフィスでただ一人の外国人という立場、それも一緒に仕事をしているみんなは男性で私だけが女性。いつも孤独な立場にあった。私はいつも蚊帳の外に置かれているような気がしていたし、私の発言もみんな表立っては見せないが案外軽く見られており、言葉も満足に出来ない私はコミュ二テイの仕事につけても足手まといになるだけと思われているのではないかと感じる事が多かった。


特にRB。何を考えているか推し量るのがむつかしい彼は、本当は私を軽蔑しているのかも知れない。表向きは私を立てているかのように見えるが、彼の真意は解りかねる。RKはRBよりは私に対して口数は多いので解りやすいのだが、一見従順に見えると言うだけで実際私の言う事をどの程度受け入れる気があるのか不明である。

日本脳炎の予防の為の啓発ポスターを作る事になった。

RBはコンピューターグラフィックが出来るので彼が担当する事に。ウイルスの伝播経路や蚊の種類などについて私が彼に説明するのだが、RBの質問攻めに会い、私は答えられない事もあったりして少々面目がつぶれそうになる。なぜなら彼は人があまり聞かないような事ばかり聞くのだ。たとえば、ウイルスの増幅動物であるブタの肉を食べたり、生き血を飲んだりしても感染しないのかとか、ブタを肉屋で殺し、さばく時に作業する人の手に創があったらそこへブタの血がかかった場合、感染するんじゃないかとか。


困った私は、いままでにそういうルートで感染した例は聞いてないというと、でもそういう事もありうるだろうと言う。彼を納得させるのにはどこかに文献で書かれたものを見せるしかないと思い、インターネットで何時間もかけて検索したが、書かれたものは見つからなかった。それに感染経路の図をネットで探してくる約束もしていたので適当な図を得るのにもかなりの検索を要した。


やっと見つけた使えそうな図にアヒルがブタと一緒に書かれてあったから大変。またしてもRBの質問。アヒルもブタのようにウイルスを増幅する動物なのか、と言う。でも日本ではブタだけしか聞いていない。はっきりとそれを裏付ける文献も見つからないまま、RBの前でどうも私は困ってしまった。


その図は日本の文献から取ったのだが、私のペンドライブにたまたまあった別の文書をRBが何気なく開けてしまった。あまりに急だったので止める暇も無かったが、それはネットにより私が目にし、興味を持ったので友人に見せようと保存した日本の新聞記事だった。そのテーマは夫婦生活についてで、日本人のセックス回数が最近極端に減っている事を取り上げたものだった。

で、案の定RBがこれは何が書いてあるのか?という。私はちょっと困り、どうしてこれを開いたのか、とやや彼をなじった。彼は、これも日本脳炎の関係の文献かと思って開けたのだ、という。


もうしょうがない、ままよ、と私はその記事のすべてをRBに訳して聞かせた。独身のRKも興味を持ったらしく、RBの席にやって来た。日本人夫婦の平均セックス回数が一年に45回で調査した41カ国のうちで最低と言うのを聞いて二人とも少なからずショックを受けたようだった。RBは、ネパールのデータはどうなんだろう?と言う。すごく多いと思う、きっと、と付け加えた。私もそれには同感した。RKは日本に少ない理由を知りたがった。こういう話題はネパールでは表立って話される事は少なく、二人がどう思って聞いているかを考え、このような話題を仕事中にしたことをやや後悔したのだったが、意外にもRBもRKも全然照れたり、恥ずかしそうなそぶりは見せない。日本の少子化についても私が言ったところ、RBはネパール人を日本へ大量に送り込めばいいんじゃないか?きっとたくさん子供が生まれるだろう、と真面目な顔で言うのだがこれは余り良い案ではなさそうに私には思えた。


二人が冷静なので私も顔色一つ変えずに話をした。二人はもっとこういう話を聞きたいように見え、私も本当はもっとこれに関する話を続けたかったのたが、仕事中だったので私は控えたのだった。でも子供のように興味深深のRBの顔が忘れられない。機会があればこういうことについて今後彼らの見解を聞くのも一つの勉強かも知れないと思ったりした。