この度のPyuhan 行きで最も印象に残ったのはなんといってもフィールド最後の日、道に迷ったというハプニングだろう。
3つのVDCを、RK、FCのD君、私というA型3人組で回るのはコンセンサスを得やすいと言う点では都合がよいのだが、なにしろ完璧主義で集中すると他の事が何も見えなくなってしまうという共通の弱点を持った3人だから大変だ。時間よりも事を完璧に成し遂げようとするあまり、VDCでの仕事も、つい終了時間が予定より大幅に遅くなってしまうという事がどのVDCでもおこってしまうのであった。
テクニシャンのB君はB型なので突然予想がつかぬ行動をしてくれ、我々3人は心配させられたり、やきもきさせられたりと振り回されてしまうのでRKは好きではないようだったが、彼がいてくれると私達の行きすぎを止めてくれるブレーキになってくれたのではないかと思う。一番いいのはバランスの取れたO型が一人居てくれたら、と思ったが、たぶんO型だろうと思われるRBが今回は一緒でなかった。
その日も案の定、5時を回ってしまい、Rajpurktの山の上から谷の一番下のDharampaniへ下るのだが、つるべ落としの秋の日ぐれはあっという間に暗くなってしまい、我々3人は懐中電灯1個と私の携帯電話の弱々しい灯りを頼りに歩かねばならぬ羽目になった。
D君はもともとJumlaの出身で、Pyuthanの地元の人間ではない。Pyuthanに来て2年になるがまだまだローカルの地理を熟知しているとは言えない。何度か歩いている道なのだが、暗くなると昼間のようにはいかない。歩き始めてまもなくD君が、この道、間違ってるような気がする、と言い出す。RKは驚いて、もっと早く気がつかなきゃ駄目じゃないか、しっかりしてくれよ!と言う。
道を替えて歩き始めてまもなく、またもや、この道も違うように思う、とD君。RKは青くなり、君は自信あるみたいに言うから信じてたのに困るじゃないか、マダムも一緒なのに、これ以上迷ったらどうする?と詰め寄る。道はどんどん狭く、歩くにくくなり、めったに人が通らないのか、草が生い茂り、それをかき分けながら進まねばならない。そうしているうちに気がつくと我々はすっかり山の中へ入って来てしまっていた。細い道の左は山で右側は崖になっていて、暗くてよく見えないが谷は深く、足を滑らそうものならどこまで落ちていってしまうのかわからず、想像するとぞっとする。でも暗いのはかえって幸いしたかも知れない。もし谷の下が見えていたらこわくて歩けなかったのではないかと思う。
RKが太い木の棒を拾って持っているので何のためか聞くと、おいはぎに会ったらこれで撃退する為だと言う。私は、ここはまさか熊が出たりはしないか聞くと、D君は、Jumlaでわなにかかった熊を感電死させたことがあると言い。その話を始めた。自分でわなを仕掛け、それにかかった大きな熊を針金をわなにつないで電気のコードから通電し、殺したそうだが熊があばれてすごい迫力だったそうだ。その後、熊の両手、両足を切断して片付ける仕事もやったそうだ。温厚にみえるD君のどこにそんなアグレッシブさが隠されているのかわからなかった。でもこの彼が一緒なら今晩は獣が出てきても安心かもしれないと思ったりした。
すでに歩き出してから2時間以上経ってしまい、お腹がすいてたまらなくなってきた。D君が先の道を見に行ってくると言う。しばらくして戻ってきたがやはり方向は確かめる事ができないままだという。RKは座り込み、マダム、ひょっとしたら今夜はここで泊まらないといけなくなるかもわからない、と深刻な面持ちで言う。RKはいつも物事を深刻に考えすぎるきらいがあるのだがこんな時それを聞くと、私も同じく深刻に考えるタチであるため、二人で暗くなってしまった。
D君も悲観的に考える人なので、とうろう3人でひざを抱えて座り込み、私が持っていたたった一つのビスケットを3人で分けながら食べ終わると、これで2時間くらいは持つと思うけど、もしここで野宿するとしたら私は薄いショールしか持ってないので寒すぎる、と言った。D君とRKは厚手のジャケットを着ていたので心配ないようだったが、それじゃ、私は二人の30過ぎの独身男に挟まれて寝るしかないのか!と考えただけでうんざりするのだった。もうフィールドが4日目で、二人とも風呂に入ってなく(当然私もだが)、勘弁してほしい、と懇願するように思った。ああ、これがRKの代わりにRBであったなら全く苦にならないどころか、逆にどんなに嬉しかっただろう。
結局迷いに迷ったあげくDharampaniにたどり着いたのは9時を回っていた。ようするに4時間も山の中をうろうろしていた事になる。
すでに寝ていた宿の女将を起こし、夕食を作らせ、我々が寝たのは11時を回っていた。宿にちょうどあった女将の手作りの焼酎を3人で飲んだのだが、疲れていたせいか思ったより酔いが回ってしまう。D君は今日初めて酒を飲んだ、というがそれにしては乾杯の手つきが慣れていたのできっとウソをついていたのだと思う。RKもグラス一杯飲み干して全く変わらないのはきっと強いのだろう。RKは8月にJumlaに行った時、宿でRBと私が二人で飲んでいた時の事を思い出して語り、あの時の酒とどっちが美味いかと聞くので似たようなものだと答えたが、やはりRBと飲んだほうがはるかに楽しかったのだった。