Salyan を後にして今度はPyuthanへ。
一度タライのハイウェイに出てからPyuthan行きのバスに乗り換えるのでとても時間がかかる。ここからは同じオフィスの飲料水関係のテクニシャンのR君が合流する。村でトレーニングを開催するためだ。R君は独身でなかなかハンサムなのだが、いつもどこか落ち着かず、ほっておけない感じのする青年である。これがまたRBと絶妙のコンビである事を知るのであった。RBはR君をかわいがっており、まるで実の兄貴のようである。R君もすでに1週間以上フィールドにいるので日焼けして、オフィスで見るよりずっと精悍なな感じになっている。フィールドから帰って来ると誰もが野性味を帯びて帰ってくる。トレッキングのように歩き、川で水を浴び、夜通しバスに揺られることで逞しさが増すのだろう。
Pyuthan の郡庁のある町からプロジェクトの現場の村へローカルバスに乗って3人で向かう。こんどの宿泊先は山の中の小さなホテル(一見普通の家)で、またもやツインの部屋しかない。で、私が小さいほうのベッドで一人で寝て、RBとR君は大きいほうのベッドで2人で寝ることに。どちらも体格が良い方なのでぎゅうぎゅうで気の毒だったが、私一人女性なので仕方がない。もし私も男だったらベッドを二つくっつけるともう少しゆったり寝れたと思うが。
例によってRBはすぐに眠ってしまい、R君もそのうち寝入ったようだったが、夜中にふとR君のあせった声で私は目覚める。「トレーニングに使う文房具をバスの中に置き忘れてしまった、どうしよう…」「何で今頃になって気がついた?」RBの声。R君は泣きそうな声になっている。それに対しRBは少し笑いを含んだ声で、「今更どうしようもないけどまあ明日の朝バスが着たら聞いてみるか?」私は可笑しくてたまらなくなり、布団の中で声を殺して笑っていたが寝たふりをしていた。
翌朝R君は6時にバスが着く前にそそくさと起き出し、まだ寝ているRBを置いてバス停のほうへ向かった。私は起きていたが寒いので布団にもぐったままでいた。RBが7時半ごろやっと起きる頃R君ががっかりした顔で帰ってきた。「模造紙は見つかったけど、ノートとボールペン、マジックは無かった。誰かに持って行かれてしまった!」
落ち込んで言うR君にRBは又少し笑いながら、「役に立ちそうな物だけ持って行かれてしまったんだ、当然の事だと思う。」と言い、大して問題にしていないようだったが、私は困っているR君を見て「マジックなら私1本だったら持ってるし、この村のお店にあるか聞いてみれば?」と言ってみた。しかしボールペンはあったがマジックは村に2件ほどしかないよろず屋には売っていなかった。深刻に落ち込むR君を前にRBと私はどうにも笑いをこらえきれずついにげらげら笑ってしまった。RBは後で加わったPyuthan担当フィールドワーカーのD君にも笑いながらその話をし、「こいつ夜中の2時になってバスに置き忘れた事を思い出したんだぜ!」と言っていた。
でもトレーニングの仕事の残っているR君だけを別の村へ残して行く時もインスタントラーメンやお菓子の入った袋を渡しながら「一人残るのは寂しいかも知れないけどすぐ又会えるんだから心配するな。」と子供に言うように言っているのを聴いて、やっぱりR君の事がかわいいんだなと思い、意外に優しいRBを発見したのだった。
その日からはR君の代わりにD君が一緒になり、RBはD君とは一つのベッドで寝ないので私は隣の部屋へ一人で泊まることになった。(D君は寒いのでRBのベッドで一緒に寝たいと言ってはいたが。)
D君は几帳面で真面目なのだが一緒にいてイマイチ面白くないのだ。R君がいた時は夕食後RBやトレーニング参加者等と一緒に歌や踊りを楽しんだりしていたのだがそれもなく、又RBとR君のコンビはそれだけで笑いを誘うものがあったので見ていて飽きる事はなかったが、なんとも退屈になってしまったのであった。仕方がないから夕食後も仕事の打ち合わせなどした。
RBは職場ではあまりしゃべらないほうで会議でもほとんど発言しない。上司Bもなぜ彼は発言しないのだろう、と私に言った事があった。多分他のRK君をはじめ理路整然としゃべるスタッフ達に圧倒されて話せないのではと思っていた。でもここへ来てからは彼は随分アクテイブになっている。仕事の打ち合わせでも積極的に発言するし、又良くポイントを心得ていて驚かされる。まるで水を得た魚のようだ。オフィスではどうして冴えないのか、不思議である。RKの話ではRBはレポートを書くのはあまり得意ではないというが、長年コミュニテイでの仕事をして来た彼はもしかしたらフィールドのプロかもしれない。コミュニテイグループとのミーティングでも彼は、教育を受ける機会が無く、識字レベルも低い村の女性達をわからせる術を心得ていた。彼が話し出すとそれらの人々が笑い、表情がなごみ、話をもっと聴こうとしたり、自分も発言しようとするのだ。そういうふうに村人を動かすのはアウトサイダーにとっては簡単ではない事を私はこの仕事を始めてから知った。以前ネパールの別のNGOのプロジェクトで働いた際にもその難しさを痛感したものだった。私はこの点をRBに学ぶべきだと感じた。