基本のシングルスペイキャスト | HARDYを楽しむ方法

HARDYを楽しむ方法

HARDYを「人生」と置き換えてみる。

私がスペイキャストに出会った当時、それは今から20年も前であるが、シングルスペイ、ダブルスペイ、スネークロールくらいしか知らなくて、ダブルスペイの水飛沫が嫌で、仕方なく左手にロッドを持ち替えてシングルスペイを練習したものである。だから、シングルスペイの理論があれば、現在の様々なスペイキャストが、すべてシングルスペイの派生だということがわかる。アンダーハンドにしたって、スカジットにしたって、基本のシングルスペイキャストがしっかり身についていれば、その応用は難しくない。逆に、シングルスペイという言葉を聞く機会が少なくなった。下手をすると先に応用編から入って、シングルスペイに辿り着く場合もあるのではないか? 結果オーライだけれども、恐らく、スカジットから入って、シングルスペイである程度の距離を投げるのは苦労するはずだ。距離? そう、距離が大切なのだ。よく、魚は案外手前にいる、と言って、遠投を初めから諦める人がいる。確かに魚は思わぬ近場にいたりするものだが、20mしか投げられない人が20m先を釣るのと、40m投げられる人が20m先を釣るのでは訳が違う。距離はイコール、技術と言っても過言ではないだろう。勿論、遠投には大前提として、タックルのバランスが求められる。今回はタックルバランスの話は抜きにして、シングルスペイの技術的な部分だけに焦点を当ててみたいと思う。

最初に投げたい方向に体を向け、右利きなら右足を少し前に出して構えると良いだろう。スペイキャストは回転運動なので、たまにラインが流れ着く下流側に体とつま先を向けて立つ人がいるが、これが体に染み付いてしまうと、回転運動のパワーを得られず、ただひたすら正面に打ち返す、いわゆるスイッチキャストしか身につかない。勿論、スイッチキャストは、シングルスペイキャストの習得の過程で必要なことではあるが、その先があることを知っておくべきだ。ラインが下流に流れ着いたら、体を下流側に捻り、いよいよリフトに移るわけだが、この際に非常に重要なことがある。リフトする時点でラインテンションを得なければならないことは、誰でも知っていると思うが、そもそも、何故リフトするか考えてみてほしい。リフトはロッドにラインのテンションを乗せるためではなく、乗せるのは当たり前で、スイープという回転運動した時に適切なテンションを保つため行っているものだ。だから、テンションは張り過ぎてもいけないし、弛み過ぎてもいけない。リフトしながら、自分にちょうど良いラインテンションを得ることが重要。張り過ぎればスイープして、バックキャストした時に、ロッドの反発によってラインは上流側に行くだろう。そうなれば、自分が投げたい方向に180°ではなくなって、パワーロス、下手をすると自分を釣る羽目になる。だから、適度なテンションを捕まえる必要があって、確かに速くロッドを動かせば、テンションは張るだろうが、硬めのロッドならチップしか曲がらないだろうし、180°の原則を破ればラインに力は伝わらない。結論を言うと、リフトで、適切なテンションを右手で感じたらすぐにスイープに入って良い。そのスイープはゆっくりと適切なテンションを保ちながら、自分の体が投げたい方向に向くまで我慢して、我慢して、180°後方、恐らく岸の後方斜め上に、バックキャストする意識ではなく、引いてきた弓を弾くような感じで、バックループができると言うのが正解。

スイープの際は、左手の肘でフックを入れるように回転させるとよい。右手はテンションを保つのみ。決して振らない。むしろ左手のパワーを逆向きにブロックすることで、綺麗なVのバックループができる。だから、左右のパワーバランスは50/50。どちらか一方が強くても、バックループは歪になる。ちなみに、私はロッドを極端に横回転させるため、所謂、ネスキャストに近いくらい、ティップの位置は低く、スイープは水面に平行、またはインクラインする。ここで一つ遠投のためのアドバイスだが、右手のブロック、これ重要で、ただ止めるのではなくて、表現は難しいが、本当の意味で両腕でバックキャストする。するとバックループが尖るのだ。

スイープ時の景色を意識したことがあるだろうか? 私はスイッチキャストを卒業したと同時に、スイープ後に自分の前に広がる景色の違いに気がついた。写真の赤い線がライン位置。皆様の目の前にもこういう景色が広がっているだろうか。

そして、アンカー位を決めるのはバックキャスト後の右腕。アンカーを落とした位置で、フォワードキャストに入れば、ラインが着水し、よりロッドに負荷がかかり、所謂、タッチ&ゴーとなる。ただし、そのタイミングにはアドバイスがある。これは遠投に特化することで、一般的には知られていないが、バックキャスト後に右腕を上げ、先ずアンカーを落とす。その後、すぐにフォワードに入るのではなくて、自分の目の前に壁をイメージして、肩から腕を後方に残したまま、ボディだけ壁にぶつける。すると一瞬フォワードキャストが遅れる。綺麗にアンカーが入っていれば、一瞬待っただけ表面張力が増して、よりロッドに負荷がかかるのだ。これを理屈で教えてくれた人はいない。まあ、ほとんど理屈で教えてくれる人はいないと思う。トーナメンターも理屈で教えてくれることはまずない。勿論、受け取る側がそのレベルに達してないから、気付かないと言うのが正確なところだけれども。

何度も言うが、重要なのは「バランス」なのだ。右手は使わないと言うのは嘘。右手も左手もバランスよく使い、その時のロッド性能とラインスペックを感じ取って、それに相応しい技術を使う。ちなみに、私のアンカーは自分で言うのもなんだが、ほとんど音がしない。投げ続けているうちに自然にそうなっていたのだが、敢えて理屈で言えば、リフトからスイープの速度変化を無くし、ゆっくりインクラインすることで、アンカーが適度に水面を滑るようになる。一瞬タイミングを待つことで、アンカー抜けはしない。

飛んで行くラインは一本の線にしか見えない。勿論、頭の上辺りでループは作っている。この後ラインの飛行に合わせてフォロースルーすればよい。フォワードキャストはまだまだ研究の余地があるが、今では環境が変わって、年に一度帰省した時にしかキャス練しないので、これ以上進歩しないかもしれない。でも、フォワードキャストに移るまでで、ほぼキャストは決まると言っても過言ではないだろう。この記事は、初学者と言うより、一通り覚えて、さらに高みを目指したいという一見実釣とは無関係な無用の長物に美学を感じる方のヒントになれば幸いです。

 

では、また。