むしろ『狂った雌』とも。

▼火傷によって失われたスー・ロイドの美貌を蘇らせるべく犯罪に手を染める医師ピーター・カッシング。整形手術に永続的効果はなく、一時的な美を取り戻すスーであったが、崩壊の恐怖が彼女を狂わせる。執着に囚われた二人を解き放つもの。それはレーザー光線だ、とばかりにレーザーガンが全てを焼き尽くすクライマックス。だが、茫然としている内に、映画は禁断のオチを迎えるのだ。▼仮にこの物語が、ゴーゴー・パーティーに招かれたカッシングの幻想とする。大麻に煙に酔った彼の幻覚とすれば映像にパンチがない。プロデューサーがカメラマンなのだろう。画造りは綺麗で色使いも面白く飽きずに最後まで見せてくれるものの怪談話としては物足りない。術後設定でノーマル美女状態のスー・ロイドが狂気のエゴを振り回しても恐怖半減だ。頬の爛れた美女こそ怖いのではないのだろうか。あるいは逆に傷を髪で隠して見せなくさせるとか、映像的な緊迫感がもっと欲しい。▼終盤、いろんな人物が突然現れて、物語は凄まじい横滑りを起こす。オチは、そのアリバイのためにとって付けたように思える。個人的には、それゆえに映画は崩壊してしまったように見えるが。▼ラスト、カッシングの表情に観客はあの女スー・ロイドだけはやめておけと投げ掛けずにはいられないだろう。彼の顔には何かに取り憑かれた者の色が見える。愛に囚われ愚行を繰り返す男は、恐ろしくも哀しい。