空腹地獄。
▼デジタル撮影の作品には暑さが伝わってこない気がする。『軍旗はためく下に』の東南アジア戦線は暑い。神経まで焼き焦がすほどだ。焼けば大抵のもの食えるという見苦しいほど、不快な食のリアリズムが飢える人間を追い込んでゆく。▼空腹の余りタブーを犯した三谷昇だったが、「世界はなにも変わっちゃいない」と自らをなんとか慰める。だが、戦後日本は、戦犯が公職に平然と復帰する恥知らずの世界に劣化したのだ。背を向け世を避け三谷はひとり絶望を生きるのだった。▼深作欣二監督としては、上官殺害および不当裁判による銃殺をメインにやったつもりが、三谷の怪演に全て喰われてしまった気もする。戦争によって人は傷つき、人格は壊れる。その様を見事に演じ切ったのだ。▼世の為政者たちは旨いものを食らいながら、若作りに余念がないようだ。欲深い彼らが飢えることはあるまいという現実に、暗澹たる思いを噛み締めざるをえない。