『映画女優』

劇場未公開の本作は「トラウマ映画館』で取り上げられたおかげで、日本でも容易に観るのとが出来るようになった ジョーン・クロフォードの伝記映画だ。私のなかの長年の疑問、なぜ名女優フェイ・ダナウェイが映画界で馬鹿にされ、名声を失ってしまったのか。謎はこれで解けた。ジョーン・クロフォードなりきりメイクでのフェイ・ダナウェイの熱演は、彼女の本来の美貌さえ忘れさせるほど凄まじい。クロフォードの隠された顔を容赦なく引き剥がし、崩れていく様をまざまざと見せつけるのだ。その強烈さは皮肉にも女優フェイ・ダナウェイ像を破壊してしまう域にまで達してしまったのかも知れない。
『愛と憎しみの伝説』は、ゲテモノ、虐待映画として、アメリカ本国ではカルト的人気があるそうだ。写真にある斧による花壇破壊や貧乏臭いと針金ハンガーにブチギレるシーンの鬼のような形相の迫力は凄まじい。これらは過剰なストレスに晒され精神を病んだ女優の姿として描かれているのだが、実は原作にはない全くの創作、でっち上げなのだ。その他もいろいろ事実と違うそうだ。この映画がなぜラジー賞を取ったのか。原因のひとつはそこにもあるだろう。
その不実を知らなければ、中盤くらいまではなかなか引き込まれる。養女クリスティーンは、利発ではあるが強情で、やられて黙っている子供ではない。子役が上手いので養母クロフォードを馬鹿にし、ひとりの女として抵抗するあたり変な面白さがある。
だが、成長したクリスティーン役の女優はあまり可愛くはなく、意地悪顔だ。そんな娘が罵倒するものだから母親との確執はさらに深刻になり、溝も深まる。若さを失いながらもキャリアの下り坂にいることを認めないハリウッドスターの富への執着の暴走はもはや誰にも止めることは出来ない 。 怪我をしないようにと放っておくしかないのだ。とにかく全てを下品に口汚く罵る初老の女の醜態がさらけ出されるのだが、その描き方には蔑む悪意がはっきり感じられる。リスペクトがなくても伝記は作れるだろうが、フェイ・ダナウェイのクロフォードに対する畏敬の念を表した熱演を無にし、結果的に二人の女優を貶めた製作側のドラマ観は断罪されても仕方がないだろう。