<要約>

・塩野義製薬がAIによるインフルエンザ診断機器の開発を進めるアイリス株式会社に12億円を出資し約14%の株式を取得した(2019/5/7 日本経済新聞記事)。

・今回の投資はマッチポンプ的なビジネスモデルになる可能性が高いと筆者は考えている(※あくまでも筆者の個人的見解です

・医学的に非倫理的とみなされる可能性のある行動が、それが悪意を持った意図的な行動でなかったとしてもきちんと議論の対象になる社会にしたい

・日本のヘルスケアビジネスのエコシステムを社会から信頼されるものに育てていきたい

 

 

<注意>

極めて個人的な感想であり、可能な限り一次情報に当たり正確性を担保するよう努力しましたが、簡単にアクセスできない情報や公開情報に間違いがあるといった可能性もあり、そのあたりを加味して記事の内容をご判断下さい。また、ある程度分かりやすく記事を作成するため、一部学術的には不正確な表現を含みますが、そちらもご理解下さい。

 

<目次>
1.    はじめに
2.    学術的視点からのコメント
 2-(a). インフルエンザの投薬治療はほとんどの場合不要です
 2-(b). インフルエンザの検査をするべき状況も実は少ない
 2-(c). 日本ではインフルエンザに対する誤った理解が蔓延している
 2-(d). リンパ濾胞がインフルエンザの診断に特異度が高い所見であると判断できる根拠が乏しすぎる
 2-(e). 小括
3.    ビジネス視点からのコメント
 3-(a). マッチポンプ的なビジネスアプローチが取られる可能性が懸念される
 3-(b). マッチポンプ的ビジネスアプローチを懸念する根拠1
 3-(c). マッチポンプ的ビジネスアプローチを懸念する根拠2 
 3-(d). 医師起業家界隈で今回のアライアンスがPositiveに捉えられている?
4.    公衆衛生学的、行政的視点からのコメント
5.    まとめ

 

~1. はじめに~

まず、筆者(原正彦)がこのような記事を書くのにふさわしい人物かどうか読者に判断して頂けるようにするため、少しだけ筆者の自己紹介を行いたいと思います。筆者は2005年に医師となった循環器内科専門医であり、アカデミアでは臨床研究領域で突出した成果を出し続けています。例えば医師8年目で、日本心臓病学会学術集会で若手研究者日本一に選ばれ、その後3年連続で世界で最も権威のあるAmerican Heart AssociationやAmerican College of Cardiologyで世界の若手研究者Top 5に選出されていいます。このように日本のデータで世界で勝負できる人物は日本の医学会において非常に希有であり、医学部において客員教授を拝命する等しています。一方で、筆者は株式会社mediVR等、複数の会社の代表取締役でもあります。例えばmediVRは設立後約1年半で経済産業省の主催するヘルスケアビジネスコンテストで優勝し、会社設立後約2年半で医療機器の開発を完了。PDMAからの届け出受理を受け2019年3月末に製品を上市。国内外からの多くの問い合わせを受け翌月4月には会社の単月黒字を達成しているほど勢いのあるヘルスケアベンチャーの社長です。厚生労働省の兼業、副業の事例でも私のことが取り上げられています。

 

 これまでも悪いと思ったことに関しては行政や大学が相手でも歯に衣着せぬ発言をしており過激派と思われがちですが、内容をよく読んで頂ければ日本をよくしようという気持でこのような発言をしているということは理解して頂けるように思います。大切なことは、少なくとも学術領域とビジネス領域の両方でそれなりの成果を上げたような背景を持つ医師が、今回の「塩野義製薬のアイリス株式会社への投資」という出来事をどのようにとらえ認識しているのかを読者の皆様に知って頂くという事かと思います。この記事を読んだ読者が何かしら考えて頂けるようなきっかけになれば幸いです。

 

 筆者の経歴やSNSアカウント等に関しましてはコチラのサイト等をご参照下さい。

 

~2. 学術的視点からのコメント~

一般の方には少し理解しづらい点があるかもしれませんので、少し話題が前後しますがまず(a)~(c)でインフルエンザに関する一般的な考え方を紹介した上で(※ここは面白くない)、(d)~(e)で今回のアライアンスに関する学術的コメントを行います。

 

2-(a). インフルエンザの投薬治療はほとんどの場合不要です

アメリカ感染症学会の提唱するインフルエンザの外来診療における診断、治療等に関するガイドラインでは、インフルエンザ患者の大部分が自然軽快するため抗ウイルス薬による投薬治療が不要な点に関してコメントがあります。したがって、日本以外の多くの国ではインフルエンザが疑われた場合も、感染拡大防止の観点から重症でなければ病院を受診しないように推奨されていることが多いです。

(※重症な場合や基礎疾患がある患者さんは受診しましょう)

 

2-(b). インフルエンザの検査をするべき状況も実は少ない

上記のアメリカ感染症学会のガイドラインでは、治療のDecision makingに影響がある場合にのみ、検査が推奨されています。例えばインフルエンザキットが陰性でも薬を処方されたことがある患者さんもいると思いますが、これは臨床的に投薬が必要だと検査前から判断していた、ということの結果です。検査の結果に関わらず、治療方針が変わらなかったので、このような場合は検査は不要だったということです。

 

2-(c). 日本ではインフルエンザに対する誤った理解が蔓延している

ただし、日本でインフルエンザが疑われた場合、病院を受診して診断書を貰って会社に提出しなければ休めなくなってしまっていたり、治癒証明書がないと勤務を開始できなくなっていることからもわかるように、検査や投薬治療が必ず行われるべきという考え方が一般人の理解です。これは国際的には標準的な考え方ではなく、事実世界の抗インフルエンザ薬の7割以上が日本で消費されているとの報告があります(文献はコチラ)。

 これは不要な投薬治療が多く行われているからであると考える専門家が多いと思います。なお、今回は参考として世界におけるインフルエンザ治療の標準的な考え方を提示しました。中には世界と日本は医療情勢が異なり日本の医療が優れているというご指摘もありますが、少なくともインフルエンザの診断及び治療に関しては医療費が増大し健康保険組合の解散が相次いでいる日本の現状を加味すると、日本においても世界標準を踏襲するのが正解だと筆者は考えています。なお、このような抗インフルエンザ薬の過剰投与は、製薬会社の過剰なマーケティングだけが原因ではなく、現場で処方している医師の知識不足や、学校保健安全法による治癒証明書提出の義務といった社会構造、短期的な利便性に食らいついてしまう国民性も多大に影響した上での結果であることも申し添えます。

 

2-(d). リンパ濾胞がインフルエンザの診断に特異度が高い所見であると判断できる根拠が乏しすぎる

アイリス株式会社は、以前からリンパ濾胞という咽頭の所見がインフルエンザの診断に有用であるという主張を根拠に、国のベンチャー支援事業であるNEDO等に事業が採択されてきました(参考記事)。

 しかしこの根拠論文である日大医誌 2013;72:11-18の研究には極めて致命的な欠陥があります。すなわち、この研究では初回の迅速検査キット陰性の患者でリンパ濾胞が確認できた患者ではその後3日間に渡って陽性になるまで検査が繰り返されている一方で、初回検査キット陰性でリンパ濾胞が確認できなかった患者は検査が繰り返されることなく、インフルエンザは陰性であるとの仮定で解析が行われています。一般的な臨床医であれば、初回検査キット陰性でリンパ濾胞陰性でも、検査を繰り返せば検査キット陽性になる患者が当然の如く出現するであろうことは容易に想像がつくでしょう。仮に独自の研究結果に基づきすでにもっときちんとしたデータが取得できていたとしても、この論文を根拠に咽頭のリンパ濾胞の有無は特異度が非常に高い有用な検査所見だと声高に主張するのは少し学術的に乱暴すぎます。

 筆者は日本で最も臨床研究の実績がある研究者の1人ですが、この程度の明らかな学術的間違いに気づかないチームではまともな研究や臨床開発が成立しないことを身をもって体験しています。このレベルの知識で医療機器の開発をすると偽陽性や偽陰性の検証等が正確に行われずにとんでもない間違いを犯す危険があるということです。例えば、今回の根拠論文において被験者は少なくともある程度インフルエンザを疑う所見を有した状態で受診されていますが、もし新しい検査キットで正常の人の咽頭を評価したらどうなるでしょうか?又は高度の発熱を有する患者の咽頭にも同じ所見を認めるかもしれません。このような検証を丁寧に行っていれば当然の如くそのような結果が学術誌に公開されていてしかるべきでしょう。このような問題点に製薬企業が気づかないはずはありませんが、後述する通り今回常識的にはあり得ない企業価値での投資が行われている事実からは、製薬企業側が学術的な正確度や真の診断的価値よりも、意図的にビジネスモデル優先で投資を決定した可能性、すなわち私の懸念するマッチポンプ的な非倫理的ビジネスモデルを生み出してしまう可能性を危惧せざるを得ません。

(※蛇足ですが、このようなリンパ濾胞の診断精度に関する疫学的研究を行う場合、1000万円もあれば十分なデータが収集できると考えています)

 

2-(e). 小括

学術的にはインフルエンザの診断、治療目的で検査が必要になる場面はこれからどんどん減っていくだろうと考えます。その中でリンパ濾胞の臨床的価値に関して、主に若い医師の間で間違った知識が広がっています。咽頭所見のみで診断を試みる危険性についても、きちんと考えておく必要があります。製薬会社がこの程度の知識を持っていないはずはありませんから、今回の塩野義製薬とアイリス株式会社のアライアンスには学術的価値をベースとしたビジネスモデル以外の別の意図が隠れているのかもしれません。

 

~3. ビジネス視点からのコメント~

3-(a). マッチポンプ的なビジネスアプローチが取られる可能性が懸念される

マッチポンプとは、マッチで火をつける一方で、同時に同じ人物が消火活動も行い、消火活動により自分の仕事を増やすような行為のことを意味します。学術的視点で述べたように、インフルエンザは投薬治療が不要な人が大半です。塩野義製薬は2018年にゾフルーザという新しい抗インフルエンザ薬を発売しました。多くの良識ある感染症専門医が、塩野義製薬が新規に販売を開始した抗インフルエンザ薬であるゾフルーザの採用を見合わせるか、その使用に関して注意喚起を行いました(記事はコチラ)。

 その一方で、ゾフルーザは発売開始後半年間で全抗インフルエンザ薬のシェアの65%を占める程使用され、2018年度の売り上げは130億円と見込まれていたようです(記事はコチラ)。また、同記事によると抗インフルエンザ薬には500億円以上の市場があるということが読み取れます。

 もしアイリスの開発する診断機器でインフルエンザ陽性という結果がでたら一般の人はどのような行動をとるでしょうか?当たり前のように医療機関を受診し、抗インフルエンザ薬の処方を求めるかもしれません。筆者は、アイリスの診断機器によってインフルエンザ疑いの患者が増加し、その人たちが抗インフルエンザ薬を求める、という構図を想像しています。まさにマッチポンプ的ビジネスモデルを取る可能性が懸念され、少し極端な表現になるかもしれませんが、不要な治療で稼ぐビジネスモデルを想定しているのではないかと危惧してしまいます。二宮 尊徳(二宮 金治郎)は「経済なき道徳は戯言であり、道徳なき経済は犯罪である」との言葉を残しています。日本のヘルスケアビジネスのプレイヤーは、極めて高度の倫理感を持たなければならないと考えています。

 

 

 ちなみにあえてコメントしておきますが、筆者自身は例えばこれまで治療できなかった患者に対して新しい治療の可能性を提案するなどして、その会社が正当な対価を得て成長することは資本主義社会の中で健全な出来事だと考えています。あくまでも、マッチポンプ的な手法を使って不要な治療で利益を上げる行為を批判の対象としたいだけであり、事実筆者が代表を務める株式会社mediVRは所謂ユニコーンと呼ばれる時価総額が1000億円を超える企業への成長を目指して事業を展開していますし、医療従事者がビジネスに参入すること自体には賛成派です。

 

3-(b). マッチポンプ的ビジネスアプローチを懸念する根拠1

塩野義製薬がAIによるインフルエンザ診断機器の開発を進めるアイリス株式会社に12億円を出資し約14%の株式を取得したとのプレスリリースが行われました。これはすなわち、アイリスという会社の価値を塩野義製薬が約86億円と評価したことと同義です。一般にヘルスケアベンチャーが売り上げをあげる前のシード期に評価される会社の価値は、3~4億円というイメージです。何れにしても、これほど学術的根拠が乏しい案件に製薬企業が極めて割高な投資を行ったと考えるが今回のプレスリリースの大方の評価だと思います。シード期のベンチャーで、臨床的価値の乏しい機器に約86億円ものバリュエーションが付くことは極めて異常なのです。もう少し詳しく話をすると、通常、回収時期にもよりますが投資額の5~10倍の値段に会社が成長することを見越して投資が行われることが多いですから、5倍の価値でも430億円の企業価値になることを見込んでいるはずです。ビジネスにおいてエクイティファイナンスはもろ刃の剣であり、この金額で投資を受けた会社はそれに見合う成果を絶対に出さなければなりません。一方で、ほぼ日本でしか展開できないであろう医療機器で、これから市場が縮小することが予測されるインフルエンザの診断機器の領域において、開発根拠が現時点で極めて脆弱な機器をまともな製品として作成し、販売を拡大していけたとしてもこの分野だけで売り上げをあげて86億円をこえるような会社の価値にすることですら不可能に近いと考えてしまいます。そのような追い詰められた状況で、マッチポンプ的なビジネスモデルを展開せずに目標を達成することは極めて困難です。このような視点から、もしかするとマッチポンプ的ビジネスモデルによる薬の販売利益を前提とした投資であったことすら十分に考えられます。例えば500億円以上の市場規模のある抗インフルエンザ治療薬の領域で、アイリスの検査機器によって病院を受診する患者さんの数が10%増えたらどうでしょうか?投資額の12億円程度は1年で余裕で回収できる計算になります。このような前提に立つと、今回のあり得ない程のバリュエーションでの投資も、十分に納得できる値段感覚になります。

 投資家の方であれば、Fair valueをはるかに超える投資がベンチャーを不幸にしてきた実例を山ほどみてきたのではないでしょうか?そういう観点から、私は今回の塩野義製薬の投資に疑問を投げかけたいと考えていますし、もう後戻りできない一歩をこれほど早期に踏み出させてしまった責任は重いと思います。私は日本で正常なヘルスケアエコシステムが出来上がることを夢見て活動をしています。ヘルスケアに関わる友人や知人には、Fair valueをはるかに超えるエクイティファイナンスの怖さを十分に認識して頂きたいと思っています。

 

3-(c) マッチポンプ的ビジネスアプローチを懸念する根拠2

アイリス株式会社は2019年4月4日付で侵襲的治療機器の開発まで行える第一種医療機器製造販売業の許可を取得しています(参考記事はコチラ)。

 診断、検査機器であればクラス2の医療機器で十分であり、侵襲的治療まで想定した第一種医療機器製造販売業を取得した理由が不明です。これは、診断を行うとともに、抗インフルエンザ薬による治療までを想定したキットの販売を想定しているのかもしれません。予算の十分でないベンチャーが、わざわざ体制構築や費用が掛かる上位の医療機器製造販売業の許可を取得する理由はありませんから、やはり塩野義製薬の販売するゾフルーザとの抱き合わせ商法を意図している可能性が懸念されます。

 

3-(d). 医師起業家界隈で今回のアライアンスがPositiveに捉えられている?

日本のヘルスケアビジネス領域のプレイヤーとしての医師はまだまだ経験不足で未熟です。臨床経験だけでなく社会の構造に無知で純粋無垢な若手医師起業家の間では今回の出来事がどちらかというとウェルカムな出来事として捉えられていることに危機感を覚えます。もしこのビジネスモデルが、日本のヘルスケアビジネスにおける成功事例等として取り上げられてしまったら、アカデミアにおいてビジネスに参入する医師に対する信頼は地に落ちてしまうのではないかと危惧しています。私は、日本のヘルスケアビジネスのエコシステムに医療現場で活躍している人物が数多く参加し、日本発で世界の医療がよくなっていく、そんな未来を信じて活動しています。だからこそ、ビジネス一本ではなく、常にアカデミアにおいても他の追従を許さないレベルで業績を出し続けています。それは、将来ヘルスケアビジネスに参入する医療関係者が後ろ指をさされない道を切り開いているからなのです。今回のように、学術的視点からもビジネス視点からも極めて異例なアライアンスの背景にある思惑を、俯瞰的な視点でとらえて評価する必要があると思います。

 日本の画像診断に基づくAIベンチャーの殆どが、数年間同じことを言い続けているだけのただのLiving deadな会社になってしまっています。それほど、画像所見から診断を付ける技術は実装が難しく、AI×ヘルスケアという耳障りのよい単語に群がった投資家は今苦汁を舐めている状況です(※失敗事例はこっそりいなくなります。過去脚光を浴びた会社が今どういう状況にあるのか実際に調べてみて下さい)。今回のアライアンスの記事に対して「おめでとうございます」等と呑気なコメントをしている若手医師起業家の諸君には、対岸の火事と思わずにしっかりと経過を見守って現実の厳しさを実感して欲しいと思います。

 

~4. 公衆衛生学的、行政的視点からのコメント~

もし、咽頭所見のみでインフルエンザの可能性を評価するような診断機器が上市されたら医療現場に大きな混乱が生じるのではないかと危惧しています。例えば、NHK等の視聴者の多いメディアで間違った医療情報が提供された翌日、外来に患者さんが殺到してその尻ぬぐいに忙殺された経験のある医師は多いのではないでしょうか?感度も特異度も100%という検査機器など有りえません。もしこの機械が誰でもつかえるようになったら、きっと医療現場は判断を求める患者の対応に忙殺されるでしょう。これらの患者の大半は、本来病院受診の必要すらなかった人たちかもしれません。その結果、塩野義製薬のゾフルーザの売り上げは物凄く上がるかもしれません。しかし国全体で医療費が益々増加していく中で、本当に必要な患者に医療費を再分配するためには、ある程度不要な検査や治療を同定してそこを切り崩していくような努力が必要になってきます。今このSNSの時代になり、例えば「風邪に抗菌薬が不要キャンペーン」は厚生労働省と現場の医療従事者が一体となりある程度の成功を収めたといえると思います(参考資料はコチラ)。

 インフルエンザで病院を受診しなくてよいことを周知していくことこそがこれから医療従事者がやっていかなければならない大きな公衆衛生上の目標であり、インフルエンザの診断機器を作ってもそれに逆行するような出来事が起こるだけのように思います。学術的背景の裏打ちが弱く、臨床的価値も非常に小さいと言わざるをえない医療機器で医療現場に混乱が生じないことを祈りたいと思います。

 

~5. まとめ~

以上、学術とビジネスを熟知した筆者が、塩野義製薬のアイリス株式会社への投資を極めてキナ臭い出来事だと考える理由をまとめて記載しました。全文を読んで頂ければ、どうして筆者がそのような考えに至ったのかをご理解頂けると思います。

 誤解を与えたくありませんが、塩野義製薬はこれまで多くの患者さんの命を救ってきた日本を代表する大変素晴らしい会社であり、筆者はその製品や企業理念、これまでの活動に対して大変深い尊敬の念を頂いています。そしてヘルスケアビジネスに身を置くものの1人として、昨今の医薬品の研究開発費の増大に関する苦労も十分に理解しており、新規に発売した薬剤でなんとか会社の売り上げを保ちたいという気持ちも痛い程よく理解できます。ただし、インフルエンザ治療薬の領域だけに限ると、その戦略が塩野義製薬らしい判断だとは必ずしも思わないことが多いです。今回の事例は、ヘルスケアビジネスに関わる医療関係者がプロフェッショナルオートノミーに基づき自己の行動模範を再検証する良い機会になると考えたいと思います。