世銀副総裁で途上国の貧困解消に取り組んだ西水さん。現在は62歳になられるそうです。彼女は、プリンストン大学で経済学を5年教えたところで、「一年の研究休暇をうちですごさないか」と世銀に誘いを受けます。ここで、大きく彼女の人生に変化が生まれるのです。
「まずは、途上国の貧しさを自分の目で見てきて欲しい」、そういわれてエジプトの首都カイロを訪ねます。豪邸マンションが立ち並ぶそのド真ん中だで、ナディアという少女が下痢から脱水症状を起こし、自分の腕の中で息を引き取った、その経験が彼女を学会から実践の場へといざなうことになるのです。
その後も、彼女はたびたび貧しい村を訪れます。ヒマラヤでは、無識字の人の家で、水道も電気もない生活に、思わず生まれた「いやだ」という感情に驚きます(彼女は、自分のあかにある「お化け」に出会って恐ろしい思いがした

と語っています)。
村は、識字率も所得も低く、働き盛りの男性は戦争、出稼ぎ、またはまき拾いのため、家を空けることが多く、お母さんも一日6時間も水汲みに費やし、毎日険しい山路を登り歩いていました。「いつか子供に教育を受けさせたい」と願う彼女らの生活に、「貧しさとは、識字率は所得で量るものではない、本質を考えなくてはならない」と実感したのでした。
「教育を受けたい」「健康でありたい」、人間としての基本的な尊厳的行為が、望んでも実現されていない世界を体験したそうです。読み書きを習得すれば、夫からの暴力から開放されることや、共有地の悲劇のような問題が解消されて、地域全体の再興が進むなど、貧困問題を大きく前進させます。しかし、なぜ識字率が低いのか、現場に行ってみないと分かりません。たとえば、途上国の女性と子供の死因の筆頭は、かまどの煙による室内汚染。電化を離村や離島で進めることは贅沢では・・と傲慢な考えを持っていたことに気付いたといいます。
彼女は、現地をエンパワーメントすることの重要性に気付き、各種改革を進めます。現地採用職員と本部職員には保険制度をはじめとする人事制度上の差別があったが、これを解消。権限委譲も進め、融資業務は現地で機動的に判断できるようにし、本部はサポート役に変えた。
改革にあたり、新しいやり方で仕事ができない人に申し出てもらったところ相当な数の職員がてをあげました。移動や転職など一人残らず面倒を見て職場をはなれてもらいました。局長クラスの管理職はいったん全員を解雇して、ビジョンと価値観を共有できる人材を再雇用しました。
こんな姿勢から、世銀でのあだ名は「鉄の女」。この姿勢は為政者に大しても同様であったようで・・・・。不正融資の仲介など悪事を働いていた大臣に、「大臣、泥棒をしていますね」と確かな証拠を持ってつめより、大臣逮捕につなげたこともあるそうです。
女性初の昇進にやっかみもあったようですが、「鈍感だから気にならなかった」

。融資現場では、イスラム圏の女性とも腹を割って話しを聞けるなど有利に働くことが多かったといいます。
そんな彼女、現在は日本の将来が気がかりだといいます。世銀で悟ったことは国づくりの要はリーダーシップであるということ。職場でも地域でも、社会を変えようとする人が増えることが大切。人は誰でもリーダーとなりえることを日本への恩返しとして伝えていきたい・・・、そう語る西水さんのエールを自分にも向けられたものであると信じて、しっかりと受け止めたいと思います。