『ルフィの仲間力』~『ONE PIECE』流、周りの人を味方に変える法(PHP文庫)
【案内より】
人々に感動を与え続けるモンスターマンガ、『ONE PIECE』。なぜ私たちはこれほどまでに、あの海賊たちの物語に心震わせられるのか。それは、誰しも抱えている「かけがえのない仲間がほしい」という欲求に応えているからだと著者は言う。本書は、ルフィのように仲間を集め、絆を深め、その仲間と大きな夢を叶える方法を突きつめたもの。原作ファンだけではなく、人間関係に悩むすべての人に役立つ1冊。原作88巻までの名言と仲間力のエッセンスを詰め込んだ、「仲間と乗り越える力」を加筆して文庫化。
【概要・感想】
著者は関西大学で、人と人とのつながりやネットワークを社会学の観点から研究されています。
ここでは、モンスターマンガ『ONE PIECE』の物語を分析することにより、仲間力の要因を抽出し整理されています。
(第1章) 仲間関係に欠かせないもの
(第2章) 仲間を集める力
(第3章) 仲間と助け合う力
(第4章) 仲間を信頼する力
(第5章) 仲間と成長する力
(書下し) 仲間と乗り越える力
著者によれば、現在は、社会の行動の単位が、家族という集合体から、仲間という集合体に変わったとされます。そして、仲間とは、「一人ではかなえられない夢を共有する人」と定義されます。ルフィの仲間力は、「ルフィと一緒に行動することで、自分の夢がかなうと思っているからこそ、進んで仲間になっている」とされ、「一人ひとりのことなる夢は、全員がそろってこそ実現できる」点を、夢を共有することの本質とされています。また、その中で、自分の弱さを認めたり、短所や欠点をフォローし合えるバランスの良い関係性の存在も指摘されます。
著者は、強いチームを作る要素として、組織論の大家チェスター・バーナードが指摘した3要素、①共通目的、②コミュニケーション、③貢献意欲を提示し、『ONE PIECE』からそれらの具体例を例示されます。また、組織構造の3形態として、①階級構造、②疑似家族構造、③フラット構造の存在を提示され、仲間関係にはフラット構造が必要であるとされます。また、緊張感のあるライバル関係や、メンバー全員が活躍できる場を持っていることの必要性も指摘されます。
著者によれば、信頼の根源は「無償の愛」から来るとされています。また、成長し続ける仲間と一緒にいることが、成長のモチベーションにつながるとされます。「何か一つでいいので、プロフェッショナルな存在」になり、「自分の長所をひたすら伸ばしてい」き、各自のその個性を活かして他の仲間を助けることが大切で、「仲間でする努力には相乗効果がある」とされます。また、「声かけ」や「一人ひとりが、それぞれに外に向かって違う集団と結びつく」ことの意義も指摘されています。
そして、著者は、「ワンピースの主要テーマである「仲間」「自由」、ルフィたちからたくさんのことを学ばせてもらえ」、「ワンピースの教えを普段の生活に活用できる方法を、若い世代の人たちと考えることが本書の表のテーマであるならば、本書の裏のテーマは、成熟した大人になった方に、未来の冒険王たちを育て、導き、託す側になってほしいと訴えること」とされ、多くの人が仲間と一緒により大きな夢を実現することを願われ筆を置かれます。
これから人間関係をコーディネートしなければならないことも多々あると思いますが、その際、どの人たちにもそれぞれに良い人間関係を築いていってもらえるよう、本書の話もヒントの1つにできればと思います。