『俯瞰する力』(福永祐一/KADOKAWA) 2024年3月刊行

 

《案内より》・・・・・・

 稀代のホースマン「福永祐一」 待望の初著書!
「天才の息子なんだから、自分もその可能性があるかもしれない」
なんて心の片隅で思っていたが、残念ながら……
自分は天才ではなかった。
もっと言えば、センスすらなかった。
その事実を早々に思い知らされ、
ジョッキーとして等身大の自分と向き合い続けた27年間――。
(本書「まえがき」より)

誰もが「天才ジョッキー」と評する父・福永洋一が果たせなかった
日本ダービー制覇、無敗のクラシック三冠。
まさに全盛期のトップジョッキーが突如、調教師に転身――。
その大きな原動力になったものとは?
自身の才能を見極め、己と向き合い続けた男の
「思考」と「決断」の軌跡。

【目次】
まえがき──「最初の決断」
第1章 コンプレックス
第2章 岩田康誠
第3章 執着
第4章 慢心と攻撃
第5章 ダービー
第6章 欲のコントロール
第7章 直感と心の声
第8章 影響~福永祐一を作った人々
第9章 パーソナリティ
第10章 転身
「最後の決断」――あとがきに代えて

 

 

《感想》

 小学校5年間(2~6年生)の同級生が、半生を振返る自伝。人と人との出会いは全く偶然な縁です。

 前半では競馬学校や競馬選手としての振返り、後半では私生活の振返り。「物事に執着しない性格」で、「何かで一番になりたい」という思いを持ち、直感や流れに身を任せて、人生の選択をされてきたとのこと。

 前半では、お世話になった北橋厩舎や瀬戸口厩舎のこと、同世代の岩田氏のこと、理論を求めて小野コーチに師事されたこと、友人の市川團十郎氏とのこと、2か月間のアメリカ滞在のこと、戦術や心の持ち方、考え方などが率直に語られています。

 後半では、子どもの頃からの、私生活が振返られています。家族のこと等は実際の情景が思い浮かびます。家庭内で相談もせず、突然転校すると言ったり、突然ジョッキーになると言われたそうです。20代の頃は、毎晩外で飲み明かすことが多かったようですが、結婚されてからは、気持ちも変わり家庭内で幸せを感じられるようになったとのことです。結婚後、調教師になられてからは、金銭感覚が変わり、タクシーよりも電車を利用、より安い駐車場を選択、飛行機はエコノミークラス、ネパール旅行はベッドが2つあるだけの狭い山小屋に5人で1泊1,000円で宿泊。高いホテルに泊まるのは、トップトレーナーになってからのお楽しみとのこと。また、勉強法についても述べられており、「一日10時間勉強したところで、脳の容量を超えてしまったら意味がない。」「頭を使うような問題は朝、ひたすら暗記をするような分野は午後に取り組むことにし、平均して一日4~5時間を試験勉強に費や」されたとのことです。

 自伝は、興味を持って読めるとともに、時間の間隙を埋めてもらえるので有難いです。

 

 

【本書で紹介されているコラム:4年間連載】

 祐言実行 - 福永祐一 | 競馬コラム - netkeiba