リレー小説:紡ぐ想い 8 [KB・作] | happy-peach-color

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モー子さんの活躍を期待していた方、ごめんなさいm(_ _ )m

先送りして、へた蓮にしてしまいました。





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一方、キョーコとのバカップルのようなイチャイチャ振りで『行ってらっしゃい』『行ってきます』と分かれた後、たどり着いた楽屋で切なげにため息を吐く蓮が居た。


「どうしたんだよ、そんなため息吐いて。
あんだけベタベタイチャイチャしてキョーコちゃんを補充しておきながら、もうキョーコちゃんが恋しいとか言わないよな?」


「いえ…。
まぁ、それも無いとは言いませんが…。」


からかい口調で尋ねる社に蓮は歯切れ悪く応えた。


「じゃあ、なんだよ?
ああ。理性が決壊しそうなんだろう?
うっかり手出したらダメだぞ!」


言われなくても分かっている。手なんか出せるわけ無い。


いつの頃からかキョーコの瞳が一瞬つらそうに揺れるのに気づいてしまっていたから。


初め、それは単に恋愛に対する拒絶反応だと思っていた。
未だにラブミー部に所属しているキョーコは相変わらず恋愛的思考回路は壊死したままで、『京子ちゃん彼氏は?』なんて軽い気持ちで聞く人達に対して『恋愛なんて馬鹿で愚かなことなんてしないんです!』と鬼気迫る勢いで宣言して憚らなかったのだから。


幼馴染からされた仕打ちを思えばそれは仕方ないのかもしれない。
そんなキョーコへの蓮からのささやかなアプローチは今まで悉く空振りに終わっていたけれど、蓮はそうやってずっと近くで見守りキョーコの傷が癒えるのを待っていたのだ。


けれども、いつになっても改善されることの無いキョーコの症状と、全く進展の無い蓮とキョーコの関係に業を煮やしたローリィは、オファーを切欠に荒療治に出ることを指示してきた。
確かにこのまま撮影に突入したのでは、蓮がダークムーンの時にスランプに陥ったように、キョーコも壁にぶち当たり演技が出来なくってしまう可能性がある。
ローリィの思惑通り、形からでも恋人同士という関係に慣れていけば心もそれに追いついてきてキョーコの壊死していた恋愛的思考回路も復旧するかもしれない。


そうして始めた恋人同士の演技は、当初は本当に大丈夫なのかと周囲に心配されるくらい赤面、絶叫、逃走、号泣、気絶と、キョーコの“恋人のスキンシップ”への拒絶っぷりに前途多難に思われた。
それでも、多少強引に、聊か過剰気味に恋人同士としてのスキンシップを繰り返すことで徐々に慣れ、もしかしたら少しは蓮の気持ちに近づいてきてくれているのではないかと期待してしまいたくなるような表情すら見せるようになっていった。


そして、今ではだいぶ自然に恋人同士のスキンシップが取れるようになって、きっと傍から見れば擬似とは言え“恋人同士”という関係を順調に築いているように見えるだろう。

蓮自身も、キョーコは蓮との恋人同士という演技にすっかり慣れてくれたと思っていたのだ。

しかし、キョーコの揺れる瞳に気付いてから注意深く観察していると、それは表面的でしかないのだと気付かされた。
それでも揺れる瞳は恋愛に対する嫌悪では無いように感じられる。
では何が原因なのかと探っていくと、蓮との擬似恋愛関係に対して悲痛の色を表しているのだという結論にたどり着いてしまった。


つまり、蓮が恋人であるという設定に対する拒否反応なのではないだろうか。

演技とは言え蓮が相手であることがつらく悲しく思ってしまうくらいに他に想う男が居るから?
いつの間にそんなに想う相手が出来たのだろう。
いや、それは昔からキョーコの中で大きな割合を占拠しているアイツなのか…?


そうだとしても後には引けない!
キョーコを他の男のところに笑って送り出すことなんて出来ない!
キョーコの居ない未来なんて考えられないのだから。


そう思ってはいても、蓮にはどうすればキョーコの気持ちを自分に向けさせることが出来るのか分からずにいる。
どうすればそんなつらそうに揺れる瞳ではなく、恋情の篭った眼差しで蓮を映してくれるようになるのだろうか。


突破口を見出せないまま、蓮は情けなくもそれに気づかないふりをし続けることしか出来ないでいるのだ。
このまま手を拱いていてはキョーコを失いかねないと分かっているのに…。


「…分かってます。」


そう応え、ハァと再び深いため息を吐いた。




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9へつづく