リレー小説:紡ぐ想い 9 [りつか・作] | happy-peach-color

happy-peach-color

ようこそいらっしゃいました。
こちらは花とゆめで連載中のスキップビートファン達が
妄想と萌えを共有すべく
リレー小説を始めた、リレー小説専用のサイトです。
原作者出版社様とは何の関係も御座いません。

うーむ・・・世界観を壊していなければいいのですが。。。

よろしければご一読くださいませ☆




******************


『お互い恋人同士なんだから、秘密はないようにしよう。沢山話して、オープンに・・・ね?』


以前彼女とこんな約束をしていた事を思い出す。

それを言った時に俺に向けられた彼女の瞳にも危うく揺れる感情が映し出されていた。


どこか軋んでいる音が聞こえてきそうな危うい関係。

恋人として触れる度、俺に向けられる揺れる瞳に、胸が痛くなる。

俺を見るたびに揺れる瞳は、他に想う男が居るからなのか?

考えたくなくても湧いてくる、今も彼女の中で大きな割合を占拠しているアイツの存在。


どうしても負けたくない。

どうしても渡せない。

どうしても離したくない。


彼女と恋人(役)として一緒に暮らしながらも拭えない不安と・・・彼女の心を占める男への嫉妬。

演技に託けて彼女の恋人(役)になっているだけの俺。

彼女に気持ちを伝えて、受け入れて貰っていない今の状況で嫉妬をするという矛盾に思わず自嘲した。


そんな権利・・本当の恋人でもない俺にあるわけもない。

けれど・・・どうしても湧いてくる不安を俺は拭うことができないまま、2週間ほどのロケに出発しなければいけなかった。


===


彼女と暮らし始めてはじめて離れることになる。

毎日過剰なスキンシップをはかり、表面上は正直幸せを感じていないと言えば嘘になる。

その幸福感を感じられなくなるロケの間は実質の距離と心の距離を電話や、メールで補おうとした。


『元気に過ごされていますか?

今日はきちんとお食事されましたか?

敦賀さんはすぐに無理をされるから心配です。

必ずお食事はとってくださいね。

                  キョーコ』


『食事より、キョーコに逢えないから元気が出ないんだ。

誰よりも君に逢いたいよ。キョーコ。』


『帰ってこられたら、沢山逢えますから・・・

そんな事言わないで明日もお仕事頑張ってくださいね。

                  キョーコ』


ロケ先のホテルで携帯の画面を見つめ呟く。


「お仕事・・・頑張ってくださいね・・・か。」


メールにまで恋人のような対応を求めたことはない。

けれども、俺は彼女を恋人として、演技ではなく本心を込めて出したメール。

その返信が、何とも味気なく感じるのは、日々のスキンシップによる幸福感に浸りすぎていたのかもしれない。


「私も・・・逢いたいです・・とか、蓮がいなくて寂しい・・・とか・・・ないよな。やっぱり。」


洩れる溜息を抑えることはできず逢えなくて寂しい想いをしているのは俺だけか・・と何とも寂しい気持ちになった。

俺が彼女を想うほど彼女は俺の事を想ってはくれない。

その想いが一層胸を苦しくする。

今までの彼女達には感じたことがない感情をまさに今、本当の恋人ではないキョーコに感じていた。


「ちょっと・・・キツいな・・・」


ソファーにもたれながら目をつむり携帯を額にあてる。

その瞬間に震えだす携帯。

発信者はキョーコの名前。

急いで通話ボタンを押した。


「あ・・の、今お電話大丈夫ですか?」


久しぶりに聞く彼女の声は耳に心地よく響く。

きっと今の俺の顔は嬉しさで崩れているに違いない。自覚があった。


「もちろんだよ?キョーコの声が聞きたいと思っていたところだったからね。どうしたの?」


「その・・・」


「ん?」


「え・・と、やっぱりいいです。すみません!」


「ちょ・・っとキョーコ待って!!」


すぐに電話を切ろうとしたキョーコを何とかつなぎとめる。


「少し・・・敦賀さんがいなくて、寂しかっただけで・・・って、あれ?私何言ってるんでしょう??すみません!!今の忘れてください!!!」


その言葉に俺は一瞬固まってしまったが、顔が緩むのを抑えることができなかった。

ここに社さんがいなくて良かったとも思う。


「それは・・・俺と同じ気持ちでいてくれたのかな?君に逢えなくて本当に寂しんだキョーコ。・・・逢いたいよ。」


「/////わ、わ、・・・あー――やっぱりなんだか恥ずかしいです!!」


「そんな事ないよ。俺たちは恋人同士だから・・ね。キョーコお願いだから・・・もう一度、言って?」


「恥ずかしいです?」


「いや、そこじゃなくてね、その前の・・・俺がいなくて寂しかった・・って、名前で呼んで言って?」


電話の向こうで赤面しているのが手に取るようにわかる。

かなり慌てているようだ。

そして、少しの間が開いた後・・・


「・・・・・蓮さん・・がいなくて、寂しかったんです・・・」


蚊の鳴くような小さな声で俺の心の不安を取り除いてくれる。

そんな彼女に更に恋心が募っていく。


「・・・俺も・・・」


いつもはもっと気の利いた事が言えるはずなのにこれ以上言葉にならなかった。

その間を彼女は俺がダメだしをしていると理解したのか、「そ、そ、それではおやすみなさい!!失礼します!!」そう言って止める間もなく通話が切れてしまった。

かけなおそうかとも思ったが、今はその幸福感の余韻に浸っていたくて、携帯に軽くキスをし眠りについた。


離れていても、俺を感じていてほしい。

いつも俺の事だけを考えていてほしい。

他の男を想っているなら、振り向かせるまで!


そう心に誓う。


=====


そうして、ロケを終え帰国した俺を出迎えたのは、空港内のオーロラビジョン。

流れている映像に俺の目は釘付けだった。



彼女の唇を撫でその手で彼女の唇にリップで色を付ける。

彼女は華の咲くような恋心満点の笑顔をアイツに向ける。


『好き・・・』


そう言ってアイツに抱きつく彼女と優しい顔で抱きしめ返すアイツ。


そしてそのリップが大写しになりナレーションが流れる。


その大きな画面から流れる映像は俺に恐ろしいほどのインパクトを与えた。

キョーコと不破の化粧品のCM。

何よりも驚いたのが恋心を全開に表現しきっているキョーコの姿。


やはり・・・悪い予感は当たってしまうのか?


―――― 俺を見るたびに揺れる瞳は、他に想う男が居るからなのか?

考えたくなくても湧いてくる、今も彼女の中で大きな割合を占拠しているアイツの存在。――――


苦しくて眩暈がしそうな俺の顔色を見て社さんが声をかけてくるが、その声は、俺の耳に入ってこない。

ただ、今見た映像がショックで・・・


―――お互い恋人同士なんだから、秘密はないようにしよう。沢山話して、オープンに・・・ね?―――


俺は彼女のアイツとこんな仕事をする話は一切聞いていない!

どうしようもなく湧き上がる嫉妬心を抑えられず、この後オフの俺は、今彼女のいる場所へと向かう。


その場所にアイツがいることを知らない俺は、ただ、ひたすら、彼女を求め、車を走らせた。




 

                                                   byりつか


10へ