リレー小説:紡ぐ想い   ⑤[カホル・作] | happy-peach-color

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④の裏側で敦賀さんはこんなことを思っていました。




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紡ぐ想い     ⑤



ラブミー部最強の恋愛拒否症候群で究極の曲解思考を持ちながら、天然記念物並みの純情乙女の最上さんを、彼女の負けず嫌いの性格を利用して同居(同棲)に持ち込み、卑怯とはわかりながらも彼女が拒否を示した場合を想定して、ありとあらゆるパターンの返答を用意し、丸め込んで(説得して)恋人生活が始まってから数日。
俺の毎日は、理性との戦いだ。



(本当は、今日は社さんがいたからペナルティじゃないんだけどね・・・。ごめんね。おいしいチャンスは逃せないんだ。)



ソファに座る俺の前に、後ろ向きにラグに座り大人しくブローをされる彼女。最初は緊張して固まっていた彼女も、今はリラックスして、湯上りのせいかほんのり頬を朱に染め、気持ちよさそうに目を閉じている。
彼女の髪は、髪染めしているにもかかわらず、柔らくてさらさらとして気持ちい。洗い立ての髪からふわりとフローラルな香りが鼻をくすぐった。やっぱりこのトリートメントにして正解だったな。バスのアメニティも、Ms.ジェリーに協力してもらい彼女にぴったりだと思う物を揃えた。甘みがあって清潔な香り。彼女にぴったりだと思ったのだ。
甘い香りのする彼女の後頭部に口づけて、ドライアーのスイッチを切った。




「はい、終わり。次はフェイシャルスキンケアだね?これを使えばいいの?」



彼女の横に並ぶボトルの一本を手に取り尋ねるが、こんなに濃厚な毎日を続けても、一向に慣れる様子のない最上さんは、手のひらで後頭部を押さえながらずざざざざっと器用にお尻と足で壁際まで後ずさった。




「・・・・・いいいいいいいいま!?なななななななにを!?」


「うん?キョーコが甘くておいしそうな匂いがしたからつい・・・・ね?いつものことだろう?ほら・・・戻っておいで。」


「ついっ!?いつも!?・・・・うううううう。」




顔を真っ赤にして固まる最上さんを呼び戻す。




「キョーコ?どうしたの?恋人同士なんだから当然だろう?それとも・・・」


「今すぐ戻りますですーーーーー!!!」





高速移動で俺の前に戻ってきた最上さんは、ぺちぺちと頬を叩いて気合を入れると俺をうるうると潤んだ瞳で見上げた。




「蓮さん・・・・お願い。」


「・・・・うん。(これは一体何の拷問なんだろう?)」




まるでキスをねだるように少し顔を上向けて、静かに目を閉じる彼女に化粧水で湿らせたコットンをパッティングしていく。ほうっと気持ちよさそうに吐息を吐きだす、ふっくりとした唇に誘われるけれど、彼女のファーストキスは思いが通じてからと必死に我慢の男だ。
化粧水、乳液、保湿クリームと順に彼女の顔に施して、今はこれだけと、最後に頬に口づけた。
ポット、頬を染めて両手で頬を押さえる最上さんににっこりと微笑んだ。




「・・・さてと、あとは背中だね?寝室に行って、パジャマの上着を脱いでベッドに俯せに寝てくれる?用意をしたらすぐに行くから。」


「うわっぎっ!?・・・破廉・・・・!?・・・・・・はいぃぃ!」



俺の微笑に慄いて、涙目で寝室に逃げ込んだ最上さんが準備できる頃合いを見計らって、ボディオイルを手に取ってゆっくりと立ち上がった。・・・流石に、目の前でやられたら理性を保つ自信がない。
寝室に足を踏み入れると、間接照明がついているだけだった。薄暗い部屋の中、ベッドに横たわる彼女の白い背中が際立ってごくりと唾を飲み込みそうになるのを堪えた。怯えさせないように気を付けながら、静かに歩み寄ると緊張にびくりと肌を震わせた。




「・・・・怖がらないで。優しくするから。」




緊張で手が震えそうになるのを叱咤して、ボディオイルを手のひらで温めてそっと彼女のなめらかな肌に滑らせた。




「・・・・はぃ・・・っ。」




ゆっくりと、彼女の背中にオイルを優しく塗りこんでいく。彼女の肌が手のひらに吸い付くような心地がして、想像以上に気持ちがいい。




(・・・自分でやっておきながらなんだけど・・・・これはまずいだろう。)




あまり長引かせると俺の精神衛生上非常によろしくない。気力で何とか乗り切って名残惜しかったが、彼女の背中から手のひらをどかした。




「・・・終わったよ?」


「・・・・・・・」


「・・・キョーコ?・・・・・・まさか・・・・やっぱり。」




両手をマットレスについてがっくりと項垂れた。最上さんは、気持ちよさそうに夢の中だ。風邪をひかないようにパジャマを羽織らせて、視線をわずかにずらすように努力しながらボタンを留めてやる。彼女の隣に滑り込んで、安心したように眠る彼女の顔を覗き込んだ。




「・・・こんな男の前で無防備に眠ったらダメだろう?何をされても文句は言えないよ?」




彼女の柔らかい髪をすきながら、聞こえないと分かっていながらもつい注進してしまう。




「・・・君の気持ちは少しは俺に近づいてくれたかな?」




動揺しながらも、恥ずかしそうに頬を染める姿を思い出しながら呟いた。あの表情は最上さんのものだった。この数日の、恋人同士のやり取りのすべてが演技だとは思えない。だけど、過去の苦い経験が確信にはしてくれなかった。




「君が俺を呪縛から解放してくれたように、俺も必ず君を呪縛から解放してみせるからね?」




決意を新たに、大事な宝物を守るように腕の中に抱き込んで瞼を閉じた。
勝負は始まったばかり。



                                            byカホル



6へつづく