(1)お金の使い道の価値観か
介護サービスを提案しても「ウチにはお金が無いから…」と拒否されるケースは少なくない。国民年金では家賃や生活費で一杯いっぱいの人だけでなく、3割負担で収入がある人でもそのように言われ、必要と思うサービスを導入できないというケースはいくらでもある。
お金というのはそれだけで価値観の違いが出るものだから、お金を理由にされるとなれば、こちらは根気強く説得を重ねるしかない。
それでも、という場合は生活保護を申請するという事になるが、これが一筋縄ではいかないものでもある。
(2)解決方法の一つである生活保護申請
私の担当したケースで「医者は信用できないから、医療には母親を診せない」という家族がいた。口ではそういうが、お金が無いから受信できないというのは見え見えだった。その代わりに薬局で薬を買ってきては飲ませていたから、その家族なりのやり方だったのだろうとは思う。
その家族に生活保護を申請したらと提案したこともあったが、全く聞く耳を持たなかった。それはその家族が方々で借金をしていて、住んでいる所がばれるのを恐れていたという事情もあった。
身から出た錆といえばその通りだが、そういう事で医療を受けられない親がいるという事は良いとは思えない。私は「このまま必要な医療を受けさせなければ、役所に報告することになる」と言い、渋々訪問診療を受け入れさせた。
果たして2か月後、入院が必要な状況になり入院。そのまま亡くなった。
このケースを振り返ると、結果として必要な医療を受けることが出来たので、良かったと思っている。生活保護云々は、その必要なサービスを受けさせるための方便という見方をしてもらえれば、結果オーライという評価だ。
ここで必要な発想は、利用者の生活が楽になるか、という事である。利用者にとって有益なものであることが第一で、介護サービスがサービスを導入しやすいかどうかは二の次である。
だから介護側の都合で生活保護導入を勧めるというのは分からなくも無いが、入り口が違うという事になるのだろう。
(3)お金という価値観
私が担当したケースでは、実際にお金がどうしても内から生活保護を申請して欲しいというケースにあったことは無い。
生活保護になれば、必要な保護がされる。それは住宅の事であったり、医療の事であったりと様々で、介護給付という事で介護の自己負担は無くなる人もいる。
介護側から見れば、必要なサービスの導入に足かせになっているお金の問題をクリアする一つの方法にもなる。
しかしそう簡単なものでもない。
例えば生活費として支給されたお金をギャンブルで使ってしまう人もいる。それも価値観というものだろう。それは余程の事が無い限り、他人が変えることは出来ない。
お金の価値観というのは語り出したらキリがない、人間の歴史だ。
そういう事を念頭に置きながら、利用者と接する必要がケアマネにはあると思う。

