(1)面倒なことは全部人に押し付けたい
利用者や家族には、ケアマネは「ただで何でもやってくれる人」という認識の人も少なくないと思う。また「月に一回、書類を持ってくる人」とか、まあその程度の認識なのだろうと思う。
良くて「何でも相談できる人」
しかし介護というのは生易しいものではない。
出来れば面倒なことは全部人に押し付けたい。それも安ければ安いほど良い。
ケアマネというのはそういう立場に追いやられてきた。「利用者の為」という大義名分のもと、やらなくても良い仕事をやってきた。
行政にとってもこれだけ便利なモノはない。
何かあれば「ケアマネに相談して下さい」と平気で言う。やらなくても良いマイナンバーカードの発行手続きにどれだけケアマネが関与したか、という事でもある。
おそらく「この位やってくれても」というモノがどんどん積み重なっていった。ましてや行政は運営指導を行う場でもある。嫌々でも顔色を窺って、協力するふりをしなければならない。行政がそういうつもりかどうかは置いておいて、ケアマネがそういう恐怖から来る従属を余儀なくされていると感じる人は少なくないと思う。
(2)ケアマネは便利屋である。
シャドーワークの議論はここ数カ月記事にもなっているが、では対策としてどこが担うのかという事については明確になっていない。
場合によっては、そういうシャドーワークは費用を徴収すべきという話まである位だ。それはそうだが、今までタダでやってきたものを、明日から費用を徴収しますなんて言うのは難しい。ましてや「お金払うならやらなくて良いよ」となって、生活が乱れでもしたら、それこそ「ケアマネは何をやっているんだ」という事になる。お金を取っても取らなくてもケアマネが苦しくなるだけなのである。
それに行政手続きで、公務員が行うという事は絶対にない。そうした場面でもケアマネが利用者から費用を徴収して何か行うというのもおかしな話だと思う。
つまり、この問題は「ケアマネがシャドーワークをやり続ければ良い」という結論になるだろう。勿論、そんな事は言わないが、実際にこの仕組みを変えるのは不可能である事は見越されていると思う。行政にとって、ケアマネは便利屋であり続けさせることが大事なのだ。
(3)責任を負わない努力を
私の利用者で、毎日バスに乗っているにもかかわらずシルバーパスの申請をしない人がいた。私はシルバーパスのリーフレットだけ渡して、自分で手続きするように話した。
絶対にやるわけはない。それでも自分で出来ることは自分でやってもらうのが当然である。果たして1年たった今でもシルバーパスを使わないでいるようだ。
これを見ても、人によっては「やってあげれば?」と思うだろう。しかし非課税証明書を役所で取る事や、パスを買いに行くという事はシャドーワークである。その人の不利益になるが、自分で出来る事までこちらがやることは無い。
私はそうしたシャドーワークにおいてはやらないことにしている。
それは他の業界からしても当たり前の事なのだ。
例えば税理士でも、相続の時の書類集めはこちらでやった。やってくれても良いじゃないかとも思うが、そういうモノなのだと思う。だから介護でも同じ。自分で出来ることは自分でやるし、やらなくても良い事までやらないのは常識だ。
つまり介護の世界というのは生活に密着しているから、その境目が不明確で、利用者や家族も、ましてケアマネまでも「ちょっとくらいなら」という事の積み重ねが今であろう。
この構造を変えるのは難しいだろう。ケアマネはこれからもシャドーワークをやり続ける羽目になる。
