(1)財産管理は難しい
高齢者が一人でいる場合を含めて、財産管理というのは難しい。施設の入居費や病院代などの請求が来た時に、本人が支払えれば良いがそうとも限らない。場合によっては銀行が現金を持って来てくれるという事もありうるだろうが、とはいえ病院がわざわざ自宅まで集金に来てくれるということは無い。
家族がいる場合は何とかなるだろうが、問題は独り身の場合である。
もう25年以上前の話だが、私がいた施設では施設に金銭管理を依頼する人が殆どで、自己管理する人は数える位しかいなかった。施設では個人の金庫は無かったし、月々に渡す小遣いでも高齢者同士の貸し借りがあったり、場合によっては高齢者が無駄遣いして必要な費用を支払えない事例があったからそういう事にしたわけで、必要と言えば必要な事だったのだろう。
施設側も金銭の支払いの滞りが無く、高齢者も預けておく方が何かと安心という防止策を取るのは当然だが、当時からも好ましくない指摘はされていたように思う。
(2)盗みは本能のようなもの
金銭を預かるというのは私がいた施設だけでなく、法人全体でそうだった。ところが系列の施設で事務員が利用者のお金を横領したことが事件になってしまった。
その他にも記事にあるように、何かと甘い言葉で高齢者を騙して搾取する介護職員の話は枚挙に暇が無く、ひどいのになると経営者が搾取を行っているというのもあるようだ。
それは研修などで倫理観を育てるなんて悠長な話ではない。追い込まれた人間が人のものを盗むというのは本能のようなものだ。
ではだれが介護職員を追い込んでいるのか、という根本問題である。それはもともと金銭的に余裕が無い人が働いているという事、介護の仕事の給与が低いという事、つまりはもともと「人のものを盗む素養のある人」が「安い給料で生活もひっ迫している状況」であれば、事件が起こるのも当然だ。そこに「福祉の仕事をする人は良い人」という世間の思い込みもあるから、余計に目立つことになる。
(3)自分の身は自分で守る
そうすると、生活に余裕があって、人のものを盗む必要のない介護職員や事業所が安心という事になるかもしれないが、おそらくそんな事業所は少ない。
そうであれば高齢者も「自分の身は自分で守る」以外に方法は無い。
盗まれたものは帰ってこない。高齢者がせっかく貯めた財産は、こうした輩によって無駄になり、その高齢者は憤り、焦燥、場合によってはなる必要のない貧困状態で老後を迎え、過ごすことになる。
だからお金のやり取りについては自己責任で出来る範囲というのは当然だが、年を取ったら信用のある、そして保障のある所にお願いするという事になるのが良いと思う。
昔は「老いたら子に従え」という言葉があったが、少子化、核家族化にある現代では死ぬまで自分の身は自分で守らなければならない。