(1)区の犬に成り下がる居宅介護支援事業所
居宅介護支援事業所の管理者要件に「主任ケアマネ」が必須になったと発表があった時、区役所に聞いたことがある。というのも主任ケアマネは区の推薦が必要だったからだ。研修受講の回数はともかく、区からは「区で活躍してくれる人を推薦する。居宅介護支援事業所の管理者になりたいからというのは推薦しない」と言われたので、私は推薦を受けることはしなかった。
それに推薦要件というのはあまりにケアマネをバカにしている。
「困難事例を受け入れろ」だの「区の行事に積極的に協力しろ」だの、簡単に言えば「区の言いなりになれ」という事。民間である居宅介護支援事業所が区の犬に成り下がることを意味する。
そこまでしてこの仕事をするほどの価値は無い。
タダでさえ人不足のケアマネ業界だ。しかもコロナ禍の影響で、在宅勤務が出来るようにもなったから、下手に時間に拘束されないで働かせてくれるところもあるだろう。
ケアマネの仕事は続けたいが、居宅介護支援事業所の管理者というマネジメントの仕事はやりたくない。
そういう考えで我が社の居宅介護支援事業所は来年3月でクロースする予定である。
(2)弱みを握られたケアマネ資格
去年の総選挙で「ケアマネの更新研修廃止」がワードとして話題になった。
介護業界というのはハッキリ言って搾取され続けてきた。
今では無料になったが、悪名高い「サービス公表制度」これも最初は数万円の費用負担は事業所に課せられた。しかも支払わないと行政に報告するという脅し文書まで届いたものだ。これは「利用者に情報を提供する」というのが建前だが、要は天下り団体への収入確保でしかない。
それと同じなのがケアマネの更新研修だ。
ケアマネは制度の担い手という面と合わせて事業所にとっても顧客確保に欠かせない存在だ。そしてケアマネ自身もこの仕事を続けたいという人は多い。辞めたいというのは職場環境が悪いというのが主な理由だから、環境さえ整えば続ける意欲はある。
それにケアマネの資格は絶対だ。
となれば「資格を失いたくない」というケアマネが殆どで、そこに目をつけられた。
何をもって言われているか分からないまま「ケアマネの質が低い」として研修を受けなければならないと言い続けられた。事業所としてもケアマネ確保は絶対だ。従って研修費用負担などの配慮をするところもあるが、ケアマネが全員受講するのだから、その金額は相当なものになる。これも天下り団体の資金源になっているのだろう。
さらに「主任ケアマネ」である。
管理者要件にすることにより研修費用を払わせることが出来る。区にしても推薦要件を出すことで、居宅介護支援事業所を意のままにすることが出来る。そういう利益が一致したのだろう。業界団体の意見を聞くことなく、この案は進んでいる。
(3)猫の目のように
こんな形で進んでおり、主任ケアマネの資格保持者はそれなりに増えたようだ。しかし昨今のケアマネ不足は深刻のようで、私のように事業を廃止するという所も多いと予想されているのだろう。私もアンケートで「法人の意向」として事業廃止と答えている。
そうなると介護難民が出て来るリスクもある。そういう理由かは分からないが東京都で推薦要件が撤廃された。
では、今まで推薦を貰って受講してきた人、区の犬になりますと面接でも言い、誓約書を書いた人たちの気持ちはどうなるのだろうとも思うが、行政はそんなのどこ吹く風だ。
しかしまだ推薦が必要な自治体があるという。まあ、そういう所はケアマネに辞められて、介護難民が出るのをアタフタしながら対応すればよいんじゃないかと思う。
そんな事もしないかな。
介護保険が始まったころもケアマネ自体が少なかったので、ケアマネが見つかるまで数カ月待たされたという話もよく聞いた。今回もおそらくそういう対応になるだろう。
行政の方も責任を取ることは無い。
ケアマネが確保できないのは、そういう研修を受けないケアマネが悪いので、行政としてはどうしようもない。だからケアマネが見つからないという人は数カ月我慢してください。これがこの制度改正の最適解なのだ。