(1)字の書けない人もいる
この押印問題や署名問題というのは随分前からあった。
というのも自分で字を書けない人がいる。目が悪くて契約書などを読めないという人もいる。というより介護の書類というのは契約書、契約書別紙、重要事項説明書、個人情報利用同意書、今は努力義務になったがサービス割合の説明書など多岐にわたる。それに法律が変われば契約書別紙(別添)みたいな形で書類を取り交わす。
そもそもいくら懇切丁寧に説明したところで、そのすべてを利用者や家族が理解できるわけではない。ましてや認知症の方など理解が難しい人もいるわけで、契約書を取り交わしたからと言って全てが丸く収まるわけではない。
勿論、だからと言って無くてよいものでは無い。介護事業所がサービスを行い、報酬を得るための根拠としてのものだからである。
そこで押印、署名問題というものだが、そういう理解が乏しい人には必ず代理人の署名を求めるという事になる。そういう人がいないという場合には後見人という手もあるが、つまりは「キチンと説明した」という証拠が欲しいのだ。
そういう意味では押印・署名が出来ない人に対する手段としては、経過記録に残しておくなどの方法が考えられる。
それに以前はモニタリングの際に利用票に印鑑を貰っていた。毎月の予定の事だからそれを承認しましたという事であるが、いつの頃からか我が社が使っているソフトでも押印欄が無くなっていて、基本的には押さなくても良いという事になっている。
だからと言って渡さなくても良いという事ではない。
私の場合は経過記録かモニタリング記録の備考欄に「次月予定を承認する。」と記載するようにしている。
(2)「あれば良い」という発想では
また、よくある事と言えば住宅改修の理由書を誰が描くかという問題である。
これは原則としてケアマネが作成することになっているが、実際に書いているケアマネは少ないだろうと予想する。
というのも何よりも面倒くさい。
それとケアマネが作成するより、業者が書いた方がよほどしっかりとしたものを作ってくれる。
だから住宅改修の業者を選ぶのも、理由書を書いてくれるところに依頼するというのはもはや常識だろうとも思う。
しかしこれは本来はダメだろう。
ついでに役所の方もケアマネが作成したものでは無いという事は重々承知している。
では、どうして黙認されているかと言えば工事をするという事をケアマネが分かっていてくださいね、という事である。
というのも以前は工事業者が利用者やケアマネが知らないうちに勝手に工事をして申請したというケースが多くあったらしい。そういうことを防止するためにもケアマネがその工事が必要で、申請したという形を取るという事になったらしい。しかし例えばケアマネが印鑑を押すと言っても、三文判であれば100円で買える。つまり反ればケアマネが書いたかは分からず、意味がない。となれば、キチ分かっていていてくださいねと確認するという運用をするという事だ。
大事なのは押印がされているか否かでは無くて、キチンと運用できているか実態の方が重要なのだ。
(3)押印問題はローカルルール?
事の本質はそういう事であり、押印は形だけとは言わないが、見直されてきているところは介護に限らず多くなってきた。
その是非は様々あるだろうとは思う。
しかし本質的な所は、利用者や家族にとって不利益にならないような取り組みが必要であって、運営指導で指摘・返戻にならないようにするために押印が必要というのは筋違いだ。
しかもそれをローカルルールだからとしている厚生労働省も無責任だろう。
確かに介護保険というのは生活に密着している制度であるので、その地域によって必要なサービス内容が異なるのは事実である。A区で認められているサービスも隣のB区では認められておらず ,不適切事例として処分されることは当たり前にある。
しかし押印や署名の問題は全国共通であり、ローカルルールではないだろうと思う。
まあ、そういう所を直していくのも「現場の声」ってやつなのかもしれないが。