(1)そもそも経営状況は報告義務がある。
「5月から今年度の介護事業実態調査(介護事業経営概況調査)を実施する。事業所・施設の経営状況、運営体制などを把握し、次の介護報酬改定に向けた議論の基礎資料として活用する方針だ。」(記事より)とあるが、そもそも経営情報の報告は義務化されたではないか。しかも報告命令に従わない場合は、最悪指定取り消しまで権限があるものである。
事業所とすればそれで経営状況は報告してるんだからいいじゃん、という事だ。
おそらく縦割りの中で調査しきれないところもあるのだろうが、こうした報告が一元化されていないという事は事業所にとって同じようなことを何度も報告することになるからいい加減にしろとなるのだ。
こういう調査は今までも随分行われてきた。
それで事業所にとって、良い結果になったかというとそうでもない。調査の結果のまとめ方にもよったのだろうが、前回の改定で訪問介護の報酬が減らされた。
つまりこういう報告は改悪の材料にも使われっるという事だから事業所としてもたまったもんじゃない。
(2)現場の声が反映されない無意味な調査
こういう調査は国、都道府県、市町村、大学、職能団体など、様々な場面で調査依頼が来る。しかも大体同じような内容。要介護者が何人とか、人員の配置がどの位とか、売り上げがどの位とか。
そもそも要介護者数なんて国保連の報告で分かるだろうし、人員配置についても届け出をする。売上高についても報酬で分かるだろうから、それをいちいち調べて用紙に転記するという作業は本当に面倒くさい。
だから事業所の立場で言えば、報告すべきはしているので、後はそちらでまとめてくださいという事である。
それにこういう調査の結果、大体ロクなことが無い。
つまりはこういう調査が現場の困っていることの解消につながっていないのだ。
例えば、一人をや雇うのにどれだけの広告費を使ったのか、人材確保の為にどれだけの労力を要して、それで結果が出たのかとか。
それに雇った人がどういう属性でどのくらい仕事をしてくれたとか。
現場ではそういう死活問題がたくさんあると思う。そういう課題を抽出して、現場の声を反映させるというなら協力のし甲斐もあるというものだが、そういう発想にはならないようだ。
勿論、要介護いくつの人がどのくらいサービスを使って、というのは知っておくべきこととしては必要だろう。
しかし我々はそんな事は今必要としていない。どうやって生き延びるかが問題なのだ。
(3)結局、力なのだ。
訪問介護のように報酬削減の根拠となるような結果となるような調査に協力したとあっては不本意だろう。
勿論、調査をする場輪としてはそういう感情を入れたものであってはならない。それは当然だ。であるならば、調査にに協力するか否かは、現場に有利な結果になるような調査であれば協力するといった、業界の圧力も必要なのだろうと思う。
それが介護業界にはない。ロクな結果にならなくても、それを理由に調査した側が不利益を被ることは無い。
それを圧力で制するというのは良いことではないが、そうでもしないと世の中は動かないというのも現実だ。
世の中、怖い人の言うことは聞く。逆に弱い人のいう事なんかは聞かない。
実はそうした現実を一番知らないのは介護業界なのかもしれない。「頑張れば報われる」「人に尽くせば報われる」そんなことは理想論であり、夢物語であるという事を理解できない人を「お花畑」というのであろう。
