(1)特養ホームが足りないという現実を
先日、都内にある特養ホームが営業に来た。
特養ホームが営業に来るのは全くないとは言わないが珍しい。しかも都内にあるホームが来るというのは10年以上ケアマネをしているが初めてだ。
特養ホームが足りないというのは常識であり、我が区内でも待機者数は相当数に上る。我が区では申請を受けた後、A判定、B判定と別れる。緊急性が低いB判定となれば、区内ホームに入れる可能性はまずないと言って良いだろう。
だからと言って区も手をこまねいているわけではない。
区内で特養ホームを立てる敷地の確保が難しい為、多摩地区であったりの特養ホーム新設の時に費用を出し、何床自分の所の待機者を受け入れさせる、いわゆる「ベッド買い」は介護保険が始まる前から行われていた。それでも待機者の解消には難しい。
そういう現実を見れば、ユニット型とはいえ都内でも他区に営業をする特養が出てきたという事は「特養ホームが足りない」という現実からの脱却の兆しがあるのかもしれない。
(2)ユニット型はこれからのスタンダード
この施設では従来型多床室30床、ユニット型個室120床の大きな施設であり、そこでのユニット型個室が全然定員に満たないというのだ。
逆に従来型多床室は満室でスタートしたという。つまり世間のニーズは従来型多床室なのだが、認可の段階でユニット型の割合を指導されたという事だそうだ。
ユニット型というのは個室数部屋を一つのユニットとして、そこに人員を配置するというやり方。
今までの多床室というのはやはり運営も難しい所があった。パーテーションで区切るとはいえ、プライバシーの確保は十分ではない。それに例えば4人部屋では、窓側が良いとか、トイレが近いから廊下側が良いとか、利用者の希望もまちまち。それになりよりも同室の人とうまく行かない時は大変だった。
昔の人は共同生活も多く慣れていたらしかったから問題が起こっても何とかなったが、最近、そしてこれからは権利の考えからいっても個室という事になるのだろう。
ただ問題は従来型に比べて費用が少し高い事。生活保護の人は入れないことなどが挙げられる。
(3)特養の赤字状態は
記事によれば特養ホームの赤字事情は、従来型42%、ユニット型31%だそう。そして評価では黒字の施設は処遇改善加算の高い所を算定出来ているとか、事業規模が大きいという傾向が挙げられている。しかも最後のまとめでは「赤字を解消するためには利用者単価を上げること」が必要と書かれている。
そりゃそうだけどさ。
そもそもであるが高齢者も家族も出来るだけ安い施設を探している。それは医療着を含めて払いきれない時に家族が負担しなくてはいけないという事もあるだろう。自分の生活だけでも大変なのに、親の面倒まで見られないという現実問題がある事は倫理の問題と切り捨てられない問題である。
それにユニット型の赤字が従来型より少ないとはいえ、定員に満ちなければ赤字事業になる。これからはユニット型が主流になるだろうという事は分かるが、経営しにくい状況で認可を出しておきながら経営状態については知らんぷりというのはあまりにもお粗末すぎる。
やはり従来型で経営を安定させながら、ユニット型に移行させていくというなら分かるが、そういうフレキシブルな考えはないんだろうと思う。
この施設は利用者、施設側とも難しい選択を強要されるケースだとおもう。
と同時に「特養足りない問題」から「特養余っている」問題の過渡期に来ているのかもしれない。