介護事業所が客を選ぶ時代へ | ケアマネ時々卓球、時々その他

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仕事は介護、プライベートでは卓球を中心に、その他もろもろ思いつくままに書いてみます。テキトーな独り言です。

 

 

(1)老人ホームでは入所者を選ぶ

私が老人ホームに勤めていたのがもう30年近く前になる。その時から入所希望者への面接は行っていた。順序でいうと、まず市区町村から入所希望者のフェイスシートが送られてくる。そしてその自治体で対処された方がいたら、その自治体から新しい肩を受けるという形をとる。それが介護保険が始まる前の措置制度でも入所の流れだ。

老人ホームは共同生活になり、私が勤めていたのは養護老人ホームで、寝たきりではない高齢者を受け入れてきた。具体的には布団の上げ下ろしができる程度のADLは欲しい所だ。

そこでフェイスシートを確認する。まず共同生活に向かないとある人はそもそもリストから外す。もしそういう人を入れたのなら、入所してから問題を起こすのが目に見えている。そうすると介護職員から文句も出てくるし、利用者同士でも生活がしにくくなってしまう。

 

それでもそういう共同生活に難ありという人が面接にくる場合もある。そういう人は施設では掃除当番もあるし、生活に職員が関与するし、という窮屈さを説明すれば、たいていの場合、向こうから断ってくる。役所としてもそういう人は持て余していて、実際に面接をしてわがままでは老人ホームには入れないということを実感させるという意味もあったと思う。

 

今思えばだが、年を取って世話をする人もなく、我がままにというより何もせずにのんびり余生を送りたいといっても、それが叶わない福祉というのはどうなんだという思いはある。

 

(2)在宅サービスにおける利用者の選別

施設で働いているときは、在宅というのはもっと我がままに過ごしているという話が多かった。それでも実際に働いてみれば、いろんな人がいる。確かに施設と違い、介護職員に逃げ場がないという点ではホームヘルパーの仕事などは大変だ。しかし中には扱いにくい人がいることも事実だ。

しかし以前は、サービス事業所側から断るというのは難しかった。やろうと思えばできたのだろうが、出来れば利用者側から断らせるという方が角が立たない。サービス事業所側から断るとすれば、ヘルパーが辞めていける人がいなくなったとかが理由になるが、ケアマネだと相手が対応困難というのは理由にならないとされてきた。それで断ってしまえばそれが前例となり、崩壊の危機にもなる。

行政にとって、利用者はあくまでもお客様であって、指導すべきはサービス事業所側なのだ。何があっても基本的には事業所に注意が入る。そこに軋轢も生まれ、サービス事業所のやる気を失わせる一因にもなっていたのは事実だ。

 

私もケアマネをしていて実際にこちらから断ったことはない。

ダメになるのは利用者から断らせた。

昔、とある人が「福祉の仕事をするには、アマチュアなら5割の利用者に受け入れられば良いが、プロとして働くなら8割の利用者に受け入れられなければだめだ」と言っていた人がいた。そう考えれば、断られたのは数人なので、まあ、プロとして及第点なのかなと思う今日この頃である。

 

(3)サービス事業所が選別する時代

さて、最近だが訪問介護で断られるケースが出てきた。それは生活援助などの安い依頼、通院介助などの不安定な依頼にその傾向が見える。訪問介護では身体介護と生活援助、同じ時間働いて単価が全く違う。そうであれば単価の高い身体介護を優先するのは当然だ。数日前打が、「介護保険外サービス」の記事を書いたとき、その記事の中にちゃっかり「生活援助」が入っていた。今後、おそらく生活援助を受けてくれる事業所が激減する。そしてやってほしければ高い金を払えということになる。

それでもヘルパー不足は止まらない。

そうすると利用者の選別も起こる。面倒だと判断されれば人不足を理由に断られる。

もう、事業所に都合の良い利用者から選ばれる時代になるのだ。

 

これは行政が一番望んでいないことだろうと思う。

しかし結果としてこういう時代が来る。しかもその責任を誰も取らないのだから、法律を決める人は無責任で良いね、と嫌みの一つでも言いたくなるのだ。

 

まあ、個人的にはそういう時代の到来を生暖かい目で見ようと思っている。