(1)死刑場を自分で作りに行く介護事業者
来年から制度として義務化される経営情報報告。介護事業所の経営の「見える化」を目的にしたもの。聞こえは良いが良い事ばかりとは思えないのが本音であろう。
まず、その事務作業。ただでさえ事務処理が煩雑なのに、それに追い打ちをかけるようなもの。それをすることによって、誰が得をするのだろう、利用者の利益に関わるものなのかはそもそも疑問である。
しかし制度として成立したからにはやらねばならない。ただし儲かっていようが儲かっていなかろうが、介護事業所にとっては損しかない。死刑場を自分で作っているようなものだ。
(2)儲かっていない場合
殆どの事業所は儲かっていないだろう。それが公表されることによりそれを見る人は当たり前だが、経営不振、事業継続のリスクなどを考える。そんなリスクのある所に就職しようと思うだろうか。また、サービスを利用しようと思うだろうか。
介護事業所を殺すのに刃物はいらない。
働く人がいなければ自然と潰れる。
おそらく多くの事業所は銀行との取引もある為、何とかして儲かっている事をアピールしているだろう。それは役員報酬を限りなく0にするとか、なんとか利益を上げているように形作る。
銀行の融資が無ければ資金繰りが滞るのはどの業界も同じだが、儲かっていない、ついでにその見込みすらないという状況ではいわゆる「自転車操業」にならざるを得ないという所だ。
(3)儲かっている場合
この場合は「介護報酬削減」の根拠になる。
今回の介護報酬で絶対に儲かっていない、事業を継続する事すら難しいと言われ続けた訪問介護が被害にあった。
これは高齢者住宅などの一部効率の良い稼ぎ方が出来るものと一体とされたからであるが、いずれにしても「儲かっている」事が削減の根拠となっている。
そうすれば儲かっていると報告する事業所が増えれば、次回の介護報酬が下がるという事になる。
(4)誰のための制度か
このように介護事業所にとってはメリットは何もない。
では、誰の利益になるのだろうか。
それは行政の「ちゃんとしている」アピールでしかない。
人を仕切る、人に言う事を聞かせるという快感の身を考えているのではないかと思う位だ。
介護はこうして破滅の道を一歩ずつ歩んでいる。