(1)ヘルパー不足、過去
2000年の介護保険開始を見据え、ホームヘルパー1~3級講習が始まり、当時は大盛況だった。来る超高齢社会を見据え、介護とは何ぞやという学ぶカルチャースクール的な要素があり、資格も取れる。上手くいけば転職や就職できるという受け手の考えもあっただろう。制度を作る方も、ホームヘルパー研修の修了者数の目標を数値化し、おそらくこれはクリアできた。そしてこれがある意味成功体験になってしまった。
研修を主宰する側にいたから分かるが、当時の受講生のほとんどが主婦である。
研修を受けたのだから仕事へ結び付けたいと思う人は多かったと思う。しかし実習で現場を見て、求人票を見て待遇の悪さを知り、多くの人が去って行った。
それでも現場に飛び込んだ人もそれなりにいたはず。
その人たちが今も頑張っているかは分からないが、少なくともあとに続く人がいない事はその通りだろう。
(2)ヘルパー不足、今
不況の時代であればそれでも妥協した人はいただろう。しかし景気が上向いて、どの業界でも人不足という事になれば介護の仕事は徐々に避けられていった。
あれだけ人気のあったヘルパー講習も定員割れになっていった。
そう、風前の灯火は今に始まった事では無く、もう10年以上前からの事だ。
それでもまだ火は灯っている。
「この仕事をはじめてから28年目に入っていますが、当初40代だったヘルパーが70代になっています。その人たちが辞めたいと言っても、辞めてもらうことができない状態です。週に2、3回でもいいから、と頼んでいるのが現実です」(文中より)
こうした人たちの「やめたい」という気持ちを何とか踏みとどまらせて今がある。
(3)ヘルパー不足、未来
求人誌や新聞折り込み広告には常に「ヘルパー募集」の広告があり、そして自社の経験ではあるがほとんど応募は無かった。おそらく他の事業所も同じだっただろう。
そして今は採用した人数によって費用が発生する、いわゆる成果型報酬の広告が主流となっている。
今後であるが、余程何かないとこのヘルパー不足は変わらない。
国は処遇改善加算を充実させたといっているが、ヘルパーを始めたばかりの人が高い給料を得られるわけではない。
とはいえ、何か手があるわけでもない。
そうすると、今のままでやるしかないというのが答えになるだろう。その点で、介護を受けられる人のハードルを上げるというのも一つの手だし、生活援助はやらない(やれない)というのも手段だ。
制度を保つためには、誰かが犠牲にならなくてはならないが、その犠牲になるのは間違いなく現場だという事。