【2章5話】
前回のあらすじ
マーベラスに呼び止められて、やっかいになることになったヴァイト達。
妹のパッツイに癒されながらも、その生い立ちを聞いて、いたたまれなくなる。
暖炉の火がチロチロと燃えている。パッツイがマーベラスの膝の上で足をブラブラとさせていた。差し障りのないお互いの身の上話をした所で、パッツイが居間でマーベラスと一緒にいるのを確認したオルゲンが、ゆっくりと目を閉じて静かに口を開いた。
「あの手配書・・・あなた達、ですよね?」
少しピリリと緊張が走る。それを見越した上でオルゲンがなおも話を続けた。
「あなた方をどうこうという話ではなくて、私達はあなた方を手助けしたい・・・そう思っています。」
「それはどういう・・・?」
ヴァイトが不思議そうな顔をしてオルゲンを見た。オルゲンはヴァイトに優しく笑いかけてその想いを話し始めた。
「あなた方が敵ではなく仲間になれる、と思ってお話します。」
そう前置きしてオルゲンはヴァイト達の方を見まわした。その視線を受けて私達も一様にコクリと頷く。
「私達は・・・反王国軍のレジスタンスです。」
「えっ?」
これには思わずネルセンが反応した。王国騎士を目指すネルセンにとっては、本来ならば敵となる相手だからだ。オルゲンの告白に複雑な心境だったが、ヴァイトがネルセンの肩を軽く引いて小さく頷くのを見て、ここは抑えることにした。どこまで私達の情報を知っているのかはわからないが、オルゲンにしてみても相手を間違えれば命を失いかけない、それだけの覚悟を持っての告白のはずだからである。
「・・・パッツイも?」
ヒューラがオルゲンの様子を窺うように尋ねた。自分の手を取り無邪気に笑いかけてきたあの子がレジスタンスだなんて、にわかには信じがたかった。というか信じたくなかった。
「あの子には何も伝えてません。できるなら普通の子供として育ってほしい。人並みの幸せを感じて生きて欲しい。だから、これからも伝えるつもりはありません。」
マーベラスの顔をにっこりと笑って見上げているパッツイの姿に目を細めながら、オルゲンは自分に言い聞かせるようにうんうんと頷いた。パッツイに対するオルゲンの愛情が、痛いほど伝わってきた。レジスタンスの一員であるオルゲンが孤児であるパッツイを戦士としてではなく、娘として見ていることにオルゲンの人柄を感じさせた。
「私達にできることがあれば・・・。ね?」
そう言ってマーラがみんなの顔を見回した。それぞれに頷く者、微笑を返す者、皆がマーラの意見に賛成しているのが分かった。ヴァイトがマーラの両肩を“がしっ”と掴み、優しく微笑んで頷く。
「とりあえずお互いの知りうる情報を交換しておきましょう。」
ヒューラがオルゲンに目配せすると、オルゲンも『そうですね』と頷いてみせた。ヒューラは、近衛兵団に追われていることと、双剣の男にミンシアがさらわれたことを話した。マーラの事はこの人達には関係ないと思い話さずにいた。とても不用意に話していい話題ではないからでもあるが、変に知ってしまうとお互いの身に余計な危険が及びかねない。一通り話を聞いてオルゲンが自分の知る情報を教えてくれた
「近衛兵団にいる双剣の男は、最近雇われた傭兵らしい。腕を見込まれて雇われただけあって、奴には何人もの同胞が討たれました。名前がキルトということぐらいしかわかりません。奴に出会ったら迷わず逃げろと教えられています。」
目立った情報はなかったが、名前が分かっただけでも良しとしよう。
「キルトが殺さずにさらったという事は、ミンシアという子の身はひとまず安全でしょう。自分の事を知る不要なものは、必ず息の根を止めるはずですから。」
それはなんとなくわかる気がする。キルトの醸し出す不気味な雰囲気を思い出して、ぶるっと体が震えた。そのキルトから逃げきれた私たちは、彼らにとってある意味希望の光として映っているのかな? なんてことを考えていると・・・。
「わっ!」
居間で寛いでいたパッツイが驚いて叫び声をあげた。
「どうした?」
思わずオルゲンが立ち上がってパッツイの無事を確認する。
「あの袋がもぞもぞって動いたの!」
あの袋・・・そうだ! 忘れていた! あまりにも目立つのでポントを背負い袋に入れて・・・。ネルセンが駆け寄り袋のひもを緩めると、待ってましたと言わんばかりにポントがぴょこんと顔を出した。
キュー
やっと外に出れた解放感からかその声も嬉しそうだ。『ごめんごめん。』とポントの頭を撫でるネルセン。ネルセンに撫でられてポントは嬉しそうに喉を鳴らしている。
「可愛いー!」
パッツイとマーベラスがポントの愛くるしさに食いついた。どうもポントは女性のきゅんポイントをくすぐるようだ。
「ふわっふわ。」
ポントを抱いたパッツイがぎゅーっと顔を寄せて至福の表情をみせる。なんと神々しいほどに可愛らしい画なのか! と皆がほんわかと癒されている中、(くそっ!)とネルセンだけはこっそりポントに嫉妬していた。
(後で5回ぐらいエサをあげるふりしてやるんだ
そんなことを思ってニヤニヤしながらポントとパッツイを見つめるネルセンを、『キモッ!』と思って、ヒューラがネルセンの足の甲をかかとで思い切り踏みつけた。
「ぎゃ!」
「大丈夫かお前さん?」
突然叫んだかと思うとつま先を掴んで倒れたネルセンを見て気遣うオルゲン。『あ、ごっめーん、大丈夫です~』最高の愛想笑いを見せながらオルゲンの視線を遮るようにネルセンとの間に入ったヒューラが、サッと振り向きざまに、キッとネルセンを睨みつけて、またオルゲンに向かって笑いかけている。(悪魔だ! 悪魔がいる!)ネルセンは思った。
気は焦るがミンシアは無事だろうというオルゲンの言葉を信じて、明日はオルゲンたちと共に王都のレジスタンスの所へ向かおうと思っている。今宵はひとまずこの辺でお開きということになった。色々と疲れたから明日に備えてゆっくりと休もう。
最後までご覧いただきありがとうございます♪
皆様の人生が笑顔の華で彩られますように(*^ー^)ノ