鯨軟骨粕漬け通称松浦漬けまたは玄海漬け。
鯨(くじら)の上あご(鼻筋)の軟骨「かぶら骨」を、細く刻み、長時間水にさらして脂を抜いたのちに、甘く調味した酒粕に漬け込んだものをこうよんでいます。
庶民が鯨を食するようになったのは江戸時代中期といわれています。江戸時代後期には鯨肉調味方という書物に70にも及ぶ料理方が残っています。
近代では敗戦後の食糧難の時に栄養価が高く安価な食材として食べられました。
1962年までは国民一人当たりの食肉供給量において鯨が牛、豚、鶏を上回っていたそうです。
海に囲まれた日本の近海には鯨の回遊路があったことも日本人の食生活で鯨が食べられるようになった要因でもあるかもしれません。
粕漬の歴史も古く、平安時代の文献である延喜式にも記載があるそうです。古くから日本に伝わる保存食です。
粕漬は酒粕を使いますが、その酒粕は日本酒を搾り取る際に出た固形物のことです。粕漬とお酒造りには密接な関係があるといえるでしょう。
酒粕にしても鯨の上あごの部分にしても本来のものとは違う副産物になるけれど大量に出て捨ててしまうのにはもったいないというところから新しい食材、商品が生まれてきたのでしょう。
発酵食品や保存食に共通することは、身近で手に入りやすい
ものの中で、より効率的に余すことなく利用する方法を考えて作られたものということです。
発酵食品は保存性の高さだけではなくまた栄養価の面でも注目されています。また発酵によってたんぱく質がアミノ酸に分解されてうま味が増します。
食材が分解されることで胃腸での吸収がよくなり消化されやすくなります。様々な菌が存在している中で腸に良い働きをしてくれる菌や善玉菌のエサとして活躍してくれるものもあり腸内環境を整えてくれます。
発酵食品の5大効果
●保存性が高い
●栄養価がアップ
●消化吸収が良くなる
●美味しさがアップ
●腸内環境改善
奈良時代から平安時代にかけて米麹が発明されて、江戸時代には庶民の間に定着していきます。
その後、微生物による活動ということがフランスの科学者ルイ・パスツールによって発見されます。著書「自然発生説の検討」に発酵は空気中の微生物の働きということが証明されました。
長い間解明されていなかった微生物の存在というメカニズムが発見されたのは大きな前進だったのでしょう。
これにより発酵技術は食品分野にとどまらず産業分野にも影響を与えることになりました。
目では見ることが出来ない微生物の働きはまだ未解明の部分が存在し可能性を秘めているのかもしれませんね!